霊子濃度危険度レベルと特殊災害被災地特別措置法

◆霊子濃度危険度レベル


 今日では、さまざまな心霊現象の発生や、土地や建物などの変質は、霊子エネルギーによって引き起こされていると判明しています。
 この霊子エネルギーは、大霊災から4年を経た今も各地の《祭壇》アルター から噴出しつづけています。各地の噴出量には差があるらしく、その結果、地域によって霊子エネルギーの濃度には偏りが見られるようになりました。
 そこで日本国政府は、被災地を6段階に分け、霊的な危険度の指標となる「霊子濃度危険度レベル」を設けました。


LEVEL0 「危険はほとんどありません」
 心霊現象の影響なく日常を送れます。
LEVEL1 「危険な事がまれにあります」
 夜間の外出は控えましょう。まれに《雑霊》ノーライフが出現します。
LEVEL2 「危険な事がときどきあります」
 夜間の外出は原則禁止です。《雑霊》が出現します。可能であれば、他の地域に避難することが望ましいです。
LEVEL3 「常に危険です」
 昼間から《雑霊》が出現します。夜間の外出は極めて危険です。速やかに低レベル地域に避難してください。
LEVEL4 「極めて危険です」
 《雑霊》の活動が活発です。《祀徒》チェインド以外の人間は正気を保てない可能性があります。一刻も早く、低レベル地域に避難してください。政府の許可を得た者以外の立ち入りを禁止します。
OVER LEVEL 「常軌を逸した危険度です」
 文字どおり、“この世”のものとは思えない光景が広がっています。


◆霊子エネルギーの拡散/残留


 本来ならば、霊子エネルギーは時が経つにつれて拡散・希薄化していき、いずれ“この世”から“あの世”へと還っていくはずのものだそうです。しかし、《雑霊》と化した霊子エネルギーは、希薄化することなく“この世”に留まり続けてしまいます。こうなった霊子エネルギーを再び拡散・希薄化させるには、《雑霊》を「退治する」必要があります。
 よって、《祀徒》が《雑霊》を退治することは、霊子エネルギーは拡散させるということであり、その地域の霊子濃度危険度レベルを下げることにつながります。逆に、今なお《祭壇》から霊子エネルギーが噴出し続けている以上、《雑霊》を放置すればその地域の霊子濃度危険度レベルは上がる一方だということになります。
 人々を幽霊の手から守るだめだけでなく、変質した日本を元に戻すためにも、《祀徒》は《雑霊》と戦い続ける必要があるのです。


 《祭主》ロードが《雑霊》を退治しても、霊子エネルギーは拡散します。その際、《祭主》は《雑霊》のエネルギーの一部を取り込むことができるようです。意志があるとはいえ、《祭主》も霊子エネルギーの塊といっていい存在です。霊子エネルギーを取り込むことによって、《祭主》自身の力、あるいは存在そのものを強くすることができます。
 《祭主》が《雑霊》退治を行う背景には、人々を守りたいという善意ばかりではなく(もちろんそれが目的の《祭主》もいますが)、自身により多くの霊子エネルギーを取り込みたいという思惑もあるようです。



◆『特殊災害被災地特別措置法』――通称『《祭主》ロード法』


 日本国政府が曲がりなりにも管理できている地域は、霊子濃度危険度レベルにおけるLEVEL3以下の地域です。LEVEL4以上の地域は、管理どころかほとんど把握すら困難というのが現状です。避難もままならず、今なお危険な地域に取り残されている人々も少なくないようです。
 こうした地域に取り残された人々を保護してきたのは、《祭主》たちでした。日本国政府はそうした現状を追認する形で『《祭主》の裁量が一部現行法に優先する』という特別法をLEVEL4以上の地域に適用しました。

 それが『特殊災害被災地特別措置法』――一般に『《祭主》法』と呼ばれる法律です。

 この法によって、《祭主》に一部の行政権・司法権を移譲することを危険視する声もありました。が、そもそもLEVEL4地域では国家機能がまともに働いていないのが実情です。ならば法律で《祭主》の行動を制限するよりは、むしろバックアップしてしまった方が《雑霊》退治には効果的だろう、と判断されたのです。

 かくして、霊力の濃い霧に蔽われた日本国内の地域に、治外法権を持つ《祭主》たちの領地が誕生することになりました。