『BloodOpera 《赤》き聖餐よ、我らを誘え』
 
 
 
《 ルール解説 》
 
 
 
■ 初期情報

(以下、スタートブックからの引用)
 
この章では『BloodOpera 《赤》き聖餐よ、我らを誘え』に参加するために必要な初期情報を紹介します。シナリオ選びの参考にしてください。
 
 
 
【シナリオの目安】
 
1 会社の設立方法
 この章に掲載された初期情報は、プレイヤーのためにシナリオの傾向と危険度を説明しています。
 
「危険度」
 ★の数で表示しています。目安はおよそ以下の通り。
 
「危険度」の目安
なし    死亡判定なし。非武装エリア。安全地帯
★     よく治安の行き届いた街レベルの平和
★★    あまり無謀なことをすると怪我をする
★★★   運が悪ければ死亡する可能性あり
★★★★  慎重に行動しないと死亡判定が発生する
★★★★★ 道を歩くだけで殺される可能性がある
 
 上記はあくまでも目安です。
 たとえ「★」が一つでも、走ってくる車の前に飛び出せば、死ぬ可能性があるでしょう。
 
「対応人数」
 担当マスターがベストの状態で対応できる参加人数の上限です。参加者がこの人数を超えると、アクションの不採用が発生したり、他マスターが代筆する可能性があります。
 
「キーワード」
 担当マスターが分析したシナリオの傾向と方針です。いくつか重要な項目について説明します。
 
『〜重視』
 執筆の際、マスターが重視している部分を示します。自分のPCの描写が欲しい人は描写重視、他の参加者と競争したい人は、かけひき重視&ゲーム性重視、そして時間が足りない人には情報重視をお薦めします。
 
『不採用(強)』
 アクション不採用の確率が特に高いシナリオです。
 
『非小説型』
 従来の小説型リアクションとは違った変わった形式のリアクションです。
 描写よりマスターとの、あるいはプレイヤー同士でのかけひきを重視する「ゲーム型」や、プレイヤーの創意工夫とセンスが光る「投稿型」をはじめ、様々な形式が存在しています。
 リアクションは小説形式ではなく、ゲームの勝敗表や記事形式のもの、あるいは参加者の投稿作品をまとめたアウトプットなどが送られてきます。
 
『18禁』
 表現上の問題で年齢制限を設けています。18歳未満のプレイヤーは参加できません。
 
『エロ』『グロ』『百合』『やおい』
 苦手な方は間違って参加しないようご注意ください。
 
――ここで紹介されたのは、あくまで選択の目安です。また、ここに掲載されていない傾向もあります。あなたのPCにもっともふさわしい舞台にたどりつけるように、お祈りしております。
 
 
 
クレイジー・ホラー・ショー
マスター:弓月つかさ
 
 『聖バルテルミー総合病院医師、フランク・ブルーター氏は献身的な医療業務に従事し、アンチエイジングの第一人者として長年にわたって活躍している。
 ……というのは表向きの話。
 変態で特殊なセンスが有名な彼の周囲には、永遠の若さと美を追求するために、患者を集めては人体実験を繰り広げているという噂が消えることは無い。
 彼の研究成果だろうか、永年に及ぶ生を得た者もいれば、尋常ならざる死を迎えた者もいる。それが彼の玩具としての報われない死なのか、彼の変態行為の末の快楽死なのか、闘病の末の死なのかは、誰も知ることができない。
 尤も、フランク・ブルーター氏が表に出る機会は殆ど無く、病院の奥の人目につかない研究棟で、自分の趣味と実益を兼ねた研究を続けているそうだ。
 更に、ブルーター氏に出会った人の話によると、氏はこの数十年の間、容姿が変わることなく、遥か過去の話でさえ昨日のことのように語りだすという。実験の成果は、十分なほど彼に還元されているに違いない。
 真実の程を探ろうと取材を申し込もうにも、ブルーター氏の好みに合わないという理由で却下された。どうやら、適当な理由で取材を拒絶しているようだ……』
 ゴシップ誌や夕刊誌などの紙面を埋める記事というものは、たいていが無責任な裏づけの無い憶測に基づいた決め付け記事に決まっている……なぜなら、私の知っているフランク・ブルーター様はそのような変態でも、人でなしでもないから――だいたい、先生を取材しに来る人なんて、ダサダサのショボいオヤジばっかりだし。あんな人たちと同じ空気を吸わなければならない先生がとてもカワイソウ――
 先生は自由。
 誰にも束縛されることも干渉されることも無く、自分が面白いと思うことだけを追求している。ただそれだけなのだから……私は、そのお手伝いをちょっとだけしているだけ――先生がブラックジャックなら私はピノコ。エナメルとレースに彩られた白いドレスが、私にとってのナース服。ヘッドセットがナースキャップ。載帽式は先生と二人だけ――
 たまに聞こえる悲鳴は、センスの無い訪問者を戒める先生の治療。信じられなくて気絶したり、耐えられなくて命を落とす人だっているのです。
 でも、先生は、研究のための尊い犠牲だった……とか言って慰めてくれる素敵な人なのです――
 ……聖バルテルミー総合病院で唯一、フランク・ブルーターの相手ができる助手、マゼンタはブルーターからの呼び出しのランプが点っているのを見て、ブルーターの部屋へと急ぐ。
 恐らく、彼が新たに思いついた趣味の作品をマゼンタに見せようというつもりなのだろう。彼女は小柄な身体を走らせ、ブルーターの部屋(というよりはそれは既に別の館なのだが……)へと急ぐ。エナメル地の白いドレスは汚れ防止のため。ナース服でないのはブルーターの趣味……様々な装飾に彩られた、一見悪趣味な廊下を越えると、ブルーター……彼の研究室の扉を彼女は開く。
「せんせい?」
 壁一面には黒いラバーの壁。そこには男女問わず人型のレリーフが浮き上がっている。口腔のパイプからは絶え間ない呼吸音……生きている。
 これを見たら、大抵の記者は先生を変態呼ばわりするわ――マゼンタの納得をよそに、遥か昔の錬金術師の部屋を思わせる様々な調度品に彩られた空間の中で、彼……彼女のような胸と化粧をしたブルーター氏は、新たな訪問者に喜びの声を上げた。
「おぉ。喜びなさい」
「まだ内容を聞いてませんけど」
「アタシのすることにダメなものは無いわ」
「はぁ」
「あら、ツレナイ返事ね……まぁいいわ。
 研究が失敗したわ」
「それのどこが喜ぶことなのですか?」
「だって、こんな研究って、無意味じゃない?
 成功しないほうがいいのよ」
「でも、それでは色々と睨まれませんか?」
「さぁ、それはどうかしら……」
 ブルーターの見つめる先には全ての血を抜かれた肉の塊が転がっていた。
 
【シナリオの目安】
危険度:★★★★
対応人数:制限なし
キーワード:『白衣』『変態』『実験』『研究』『発明』『勢力争い』『エロ』『グロ』『耽美』『女王様』『フェティッシュ』『ギャグとシリアス半分半分』『ルーレット』『デラショッカー』『元ネタいろいろ』『たぶん悲喜劇』
 
 
 
月下の舞台を染める色
マスター:Seena
 
 町の中に突然にその建物はある。
 僕はいつもその前で足を止めてしまう。
 円形をした大きな建物は、円筒形をした石の柱や彫像や彫刻、たくさんの窓に飾られ、周りとは違う空気をまとっている。
 どこを探しても、建物の名称らしきものは見当たらず、何の建物なのか分からない。
 劇場のようなのだが、なにを上演しているのか全く分からず、閉じられた門の向こうに見える窓も、すりガラスやステンドグラスで飾られ、中を探ることはできない。
 だけどあの夜、仕事でひどく遅くなった帰り道、建物の門が開かれていた。
 大きく開かれた扉からはちらちらと揺れる光と、かすかな音楽が響いていた。
「どうかしましたか?」
 突然に声をかけてきたのは黒服を着た男。
 時代錯誤な、けれども高価な服に身を包んで、薄い赤い唇をした男だった。
「ここは会員制のオペラハウスですよ……ほう、なるほどそうでしたか……では、私が招待しましょう」
 僕は迷わず頷き、男の後をついてオペラハウスの扉をくぐった。
 シャンデリアに照らされ、客のつけた高価な香水の香りに満ち、絨毯は躓くほどだった。
 ボーイに二階のボックス席に案内されると、程なく上演が始まった。
 宝石に飾られたオペラグラスを覗くと、舞台に並んだ少年少女が、近くに見えた。
 黒いベルベットと白いレースの服を着て、胸元に赤いリボンを飾っていた。
 みな人形のように美しいが、青白いほどの肌と白に近い髪の色をしている。
 微笑めばどんなに愛らしいことだろうに、彼らはまったくの無表情だ。
 楽器が鳴り響き、子供たちが唇を開く。
 音楽に疎い僕にだって、この歌がすばらしいものだということがわかる。
 音楽が変わり、ひとりの娘が光の中に歩みだした。
 黒いドレス、長い黒髪、肌は白磁のようで、唇は血を刷いたように赤い。
 娘が唇を開く……おおこれが天国の、ああ天使の歌声。
 夢中のうちに演目は終わってしまった。
「ずいぶん楽しまれたようですね。一緒に見ている私もとても楽しませてもらいました。このような楽しい観劇は久しぶりです。私からささやかなお礼をしましょう」
僕は、舞台の余韻に浸りながら階段を下りた。
 気持ちは高ぶり、心臓は早鐘を打ち、しかし、頭は霞がかかったよう……
暗い場所を抜け、光の中に出た。
 たくさんの澄んだ瞳が僕を見つめていた。
 スポットライトに満ちた、ここは舞台。
 子供たちと観客に見つめられて僕は凍りついた。
「マリエ笑っておくれ、君にまた笑って欲しいんだ」
 黒い男が黒衣の娘、マリエに声をかける。
 マリエは眉をよせ、悲しげに目を伏せてしまう。
 子供たちが僕に手を伸ばす、全くの無表情のまま……
 それからのことは、全くおぼえていない。
 気がつけば僕は自分のベッドの上に居た。
 本当にすばらしい体験だった……もう一度、あの歌声を聴きたい。
 
 そう語った彼は真っ青で、数日後に息を引き取った。……体内には、ほとんど血が残っていなかったそうだ。
 わたしはオペラハウスに足を運んでみた。
 彼が言ったとおりの古臭く重厚な外観で、やはり門は硬く閉まっていた。
 ただ、一つ違うのは、門に一枚のポスターが貼られていたことだけ。
 このオペラハウスの雑用やアシスタント、役者見習いを募集するものだった。
 ここに彼の死の理由があるのかもしれない……バカなことを、わたしはなにを考えているのだ。
 調べたところで彼が生き返るわけではないのに。
 
『雑用・アシスタント・役者見習い募集中。
 年齢、性別問わず。住み込み、食事つき。
 このオペラハウスですばらしい舞台を作りあ…………
 
【シナリオの目安】
危険度:★★★★
対応人数:50人前後
キーワード:『アクション』『人外バトル』『肉弾戦』『シリアス』『悲劇』『狂気』『流血』『悲恋』『黒い方がやります』
 
 
 
失われた時、還り来るもの
マスター:露木えびね
 
[ルネ・ロメの場合]
 南国の港町、マルセイユ。その中央を貫くカヌビエール通りから路地裏に入った場所に、その建物は佇んでいる。外装は古い。平凡なオフィス用の建造物だ。ファサードの上部に、これだけは近代的なゴチック体で、「ADR」と彫り込まれている。アレクサデータリサーチの略さ、と、額に落ちてくる金髪をかき上げながらルネは心の中で言う。
 こんな古めかしい建物の中に、巨大総合商社「alexa」の仏支社が存在しているとは、誰も思わないだろうな。だけど、それこそが肝心な点だ。僕達、『ドレーガ』の鎖を断ち切ろうと覚悟を決めた『ロアド』にとっては。
 この世界には、いったい何人位の『ドレーガ』が存在しているんだろう。それも、あいつレベルの、強力な『ドレーガ』は? 逃げても、振り払ってもまつわりついてくる、『ドレーガ』の鎖に立ちむかおうと決めた同志それぞれの背後にいる『ドレーガ』は、どんなやつらだ?
 いや、ほかの連中のことは、今はいい。僕にはあいつに立ちむかう力を持つことが先決だ。だから、パリから戻ってきたんだ。このまま研究室に残れと言ってくれた教授の親切を断って、この大嫌いな、魚臭い港町に。
 パリは大好きだ。冷ややかで、みんなが忙しく働いていて、押しつけがましさがない。教会から響いてくる鐘の音色まで、涼しく澄んで聞こえる。ときおり見かけたシスター達も、垢抜けていて、たおやかだで、それでいて親切心はちゃんと忘れない。……残れるんなら、あのままパリに残りたかった。でも、それじゃダメなんだ。結局、あいつが育て上げたロメ家の財産で生活させてもらい、あいつの監視下に置かれたまま一生を過ごす。僕はもう、そんな人生に甘んじるつもりはないのだから。 戦いだ。保護者面して、偽善者ぶって、何百年間(いや知っているぞ。正確には多分565年間だ)も、ロメ家の人々を自分に縛り付けてきたあいつに。
「アレクサデータリサーチ、ここが今日から僕の戦場になる。ジャン・クラン、いや、いつか本当の名でお前を永遠に封印してやるための、最初の戦場だ」
 それだけを口に出し、ルネ・ロメは、ADR社の扉を両手で開いた。
 
[ジャン・クラン(?)の場合]
 カヌビエール通りをいささか登った場所にある瀟洒なホテルの別棟に、ペンションが建っている。そこで、ルネについての会話が交わされる。
「ADRの幹部連中は、ルネに、ネットワークを駆使した各種情報の収集と管理のための会社と説明する気なのだな、アデラ」
「はい。パワーアップした興信所、でしょうか。それにデータバンク機能を付加したもの、という感じかと」
「その連中が、ルネをパリから呼び戻し、縁故採用したのか。ルネも、それは承知で入社しようとしている」
 アデラ、と呼ばれた、ルネに良く似た金髪の乙女は静かな息を吐いた。
「弟は、あなた様に反発したいだけなのです。やがて目が醒めると、グラン・マも言っています」
「それはどうかな。……ルネには、硬い芯のようなものがある。その点ではあのひとに似ているな。ロメ家の血は、よくよく濃いと見える」
「ジャン様……血を、お吸いになりたいですか? だったらグラン・マを呼んできます」
「いやいい。今は、イザベルに負担をかけたくない」
 黒髪の男は、左手でそばの花瓶から薔薇を一本引き抜き、茎を、だらりと下がった右手の甲にぐいっと走らせる。血の筋が一本走る。男は左腕で右の手首を持ち上げ、自らの手に流れる赤い滴りに唇をつけた。
 その姿勢のまま、彼は動かない。アデラは、そっと部屋を出る。薄暗い部屋の中には、男だけが残された。
 ……あのひとは、息絶える瞬間まで、「イエス様、イエス様」と叫んでいた。あの声を忘れることは、いついかなる時にも、私には出来ない。この胸を剣で裂かれ、黒い血を注ぎ込まれた瞬間のことさえ、思い出さない日はあるというのに。
 わかっている。私はもう、永遠にあのひとのそばへは行けない。『ドレーガ』に「染められた」あの瞬間から。それでいいのだ。私がやり遂げたいことは、別にある。
 
【シナリオの目安】
危険度:★★★
対応人数:〜40人
キーワード:『描写重視』『かけひき重視』』『冒険』『バトル』『メロドラマ』『シリアス&コメディ(ギャグにはあらず)』『謎解き』『尼僧服』『孤児院』』『悪の美学』『トラウマ』『悲劇』『狂気』『憎悪』『野望』『友情』『忠誠』『不条理』『洋風オカルト』『ロマネスク趣味』『そしてずばり、至情の愛』
 
 
 
野伏部隊
マスター:苑脇つぐみ
 
●福島県郡山市:戦闘隊長マイケル・マーロウ
 夜目に煌々と輝く焔の輝きを、眺めながら報告を待つ。ほどなく、副官が無表情に歩み寄ってくる。
「隊長。『ドレーガ』の搬送準備、できました」
「おう。他の裏切者はどうした? 処分したか」
「はい。14名全員、あそこに」
 副官が指さす先は、マーロウが眺めていた焔の主、轟々と燃え盛る教会。焔の中に時折、悲鳴をあげて動く生きた松明が混じる。
「ただ、こちらの損害も甚大ですね」
「何人やられた?」
「5人です。それと8人が重傷、4人が軽傷。先月からの損耗が響いてますね。残存は我々を含め12名です」
「ちっ……こりゃ当分、開店休業か? 『ドレーガ』と裏切者を始末してまわるにゃ、手が足りねえ」
 炎を囲んでうごめく黒い影、彼の部下を見ながら唸る。
「『ドレーガ』を相手の立ち回りだ、仕方ねえか。とりあえず、牝狐に報告だ。それと、ブラザーにもな」
 
●東京都港区:代表オリガ・ゴドノワ
「オリガ様。マーロウから連絡が入りました」
 薄暗い寝室に響いた秘書の声に、むくりとベッドから身を起こす。時計を見れば、午前3時。
「ああ……『ドレーガ』は捕獲できたの?」
「はい。ただちにこちらに搬送すると。それと……被害が大きいので、以後の作戦は一時延期にするそうです」
「あらら。あのケダモノが弱音吐くなんて珍しいわね」
 ベッドに寝そべったまま、気怠げに銀髪をかきあげる。
「死亡5、負傷12と。戦闘部隊の損耗を考えると、少なくとも1ヶ月は、行動に支障が出ます」
「ふん……どうしたものかしらねえ」
 深刻そうな様子を毛ほども見せず、ほんのわずか黙る。
「そうね。久しぶりに、新規募集してみましょうか」
「募集……ですか」
「そう。Alexaの下っ端連中に、募集広告を出しておいてちょうだい。うまくすれば集まるでしょう、『ドレーガ』や彼らを助ける裏切者を皆殺しにしたい殺人鬼が」
「はい。それでは、国内のAlexa関連の情報網に告知をまいておきます。技術顧問のブラザー・ベネディクトには、応募人数に応じて追加武器の発注をかけましょう」
「お願い。ああ、それと」
 会釈して出ていこうとする秘書を呼びとめる。
「目が冴えてしまったわ。指示を出したら、夜が明けるまでの間、付き合ってちょうだい」
 
●東京都千代田区・『野伏部隊』本部:全員
「募集に応じて下さった皆さん、ありがとう。私が代表のオリガ・ゴドノワです」
 他にテナントのない古ビルの一角、いずれ一癖ありげな連中を前に、どこか気怠げな妙齢の美女が挨拶する。
「皆さんには、『ドレーガ』及びその協力者を始末するという仕事に就いていただきます」
 美女の背後にいる幹部達……武骨な大男、黒い神父服の上から白衣をまとった老人、スーツ姿の無表情な少女が、揃って一同を眺め渡す。
「成果によっては、私達からそれなりの報酬をお約束しましょう。金、物品、あるいは武器、情報……私達のいずれかを指名し、欲しい物を仰って下されば結構です」
 美女の笑みが、不意に深まる。
「といっても、皆さんがそれを全うできるだけの能力があるかどうかわかりませんので、最初は簡単な任務を用意しました。どちらでも、お好きな方を選んでください」
 そこで、美女に代わりスーツ姿の少女が前に出る。
 淡々と、手にしたファイルを読み上げる。……彼女が読み上げた任務は、2つ。
 
1 『ドレーガ』アグネスの捕獲
女、186歳。6月30日時点で、山形県新庄市郊外にある教会に滞在を確認。単身で行動しているが、協力者の有無は未確認。M・マーロウに協力し、捕獲せよ。なお、目撃者の処分も任務に含まれる。
 
2 『ドレーガ』の協力者・秦野ゆかりの抹殺
女、28歳。神奈川県横須賀市のマンションに独居中。同市市役所職員。『ドレーガ』及び協力者に職権を濫用し便宜を図っている。すみやかに処分せよ。
 
【シナリオの目安】
危険度:★★★(『ドレーガ』及び協力者は★★★★★)
対応人数:〜120名
キーワード:『バトル』『非合法活動』『18禁』『ゲーム性重視』『不採用(強)』『非小説型』『死亡率高し』
 
 
 
ラルフェンタンツ
マスター:金華山鹿之介
 
 ここに一通の招待状がある。
 
貴君が一流の狩猟家であるなら
この招待状を受けとる資格がある。
富を得る機会を与えよう。
分相応の富を。
 
貴君が一流の蒐集家であるなら
この招待状を受け取る資格がある。
品を手にとる機会を与えよう
分相応の品を。
 
貴君のために、かの扉を開こう
我がために、秘宝の扉を開こう
命を懸ける者に、死の扉を開こう
死を恐れぬ者に、富の扉を開こう
 
すべてを捨てても構わぬ者へ
ひとつの富を得ようという者へ
わが屋敷へ招待しよう。
【蒐集家】
 
 かすかに香水の残り香がするカード。
 時代がかった飾り文字は手書きのようだ。
 十数年に一度、開かれるゲームの招待状だった。
 手段はどうあれ、幻の招待状を手に入れたのだ。
 【蒐集家】が所有するある場所から、貴重品をとってくるだけ。それを【蒐集家】が気に入れば、望む富と地位があたえらえるという。
 手に入れた珍品貴重品を自分の物にすることも(【蒐集家】が許せば)できる。もちろん、他人が手に入れた品を奪うことも許されている。
 『ロアド』に雇われた『アウスターグ』が送り込まれることもあるという。このゲームに参加した者の多くが命を落としているが、成功に見合う富と地位を求めて『ロアド』たちは参加する。
 あなたは同封された屋敷への地図を見つめた。
 
〈夜の女優〉 「はじまるのね。命をかけたゲームが」
〈政治屋〉 「〈12人組〉が7人も顔をそろえるとは最後の祝宴以来か?」
〈偽賢者〉 「なかには代替わりした者もおるそうだが」
〈政治屋〉 「今回は遠慮したいね」
〈鑑定家〉 「あそこに潜りたくないのもわかるわん」
〈偽賢者〉 「それも良い選択じゃな。【蒐集家】は強制はしない」
〈政治屋〉 「……我々には“睨彩”がいない。参加しても勝ち目はないだろう」
〈富豪〉 「前回、“睨彩”をおさえていたが──」
〈鑑定家〉 「“睨彩”は失われたわん」
〈暗黒街〉 「〈森の淑女〉はどうするだろうな」
〈政治屋〉 「彼女が“睨彩”を見つけ出したからこそ我々は勝ち残れたが……」
〈夜の女優〉 「つまりあなた個人も標的になるのよ」
〈富豪〉 「あの“12の宝石”を持つかぎりな」
〈政治屋〉 「“睨彩”なしにはただの貴石だ」
〈夜の女優〉 「秘密を知れば連中はそうは思わないわ。とりあえず、同盟関係は継続ね?」
〈暗黒街〉 「だから〈12人組〉は勝ち残れた」
〈殺し屋〉 「へへへっ、おたがい“裏切り”もしたぜ」
〈暗黒街〉 「あれは“かけひき”だ」
〈偽賢者〉 「代理人を雇う金ぐらいあるじゃろ?」
〈政治屋〉 「参加するしないにしても……〈12人組〉は巻き込まれる」
 
「フィーリア……」
 【蒐集家】はグラスを置いて、アンティークチェアに腰を下ろす着飾った少女に視線をおくる。
 膝の上の猫が顔を上げ少女を見つめた。
 やさしく背を撫でる少女の手が止まったからだ。
 12歳ぐらいか。
 柔らかなウェーブのかかった金色の前髪がゆれた。
「ゲームが始まる。いくつ集まるか判らんが、しばらくは楽しめそうだ」
 少女は寂しげに微笑み、視線を落とす。
 愛撫を懇願する猫の背をまた撫で始めた。
 
【シナリオの目安】
死の罠と冒険にみちたトレジャーシナリオです。かならず行動補足欄の1行目に任意の2桁の数字を5つ書いてください。例=04、85、66、97、03
危険度:★★★★
対応人数:〜40人
キーワード:『アイテム争奪』『交流重視』『謎解き』『リンク有』
 
 
 
幻の鍵、探して
マスター:上原聖
 
 ここは日本。山の奥深くに隠れるようにして存在する地返村。
 村を囲む森と泉のそばに、尖塔のある邸宅があった。
 門に掲げられた名前は「常葉聖良(ときわ・せいら)」。
 
 今日は満月。地返村の祭りの日だ。
 地返村に住んでいる者も、就職した者も、可能な限り戻ってきてこの月に一度の祭りに参加する。
 村人の全員が、日本人離れした……西洋人の特徴を、全身のどこかしらに残していた。
 その輪の中心、屋外用テーブルで、ポーカー勝負をしている二人がいた。
「Aのスリーカード!」
「残念。2のフォーカードよ」
 ほっそりした背の高い黒髪の少女が、トランプをテーブルの上に置き、微笑した。
 周りを取り囲んだ村人たちの失笑、苦笑、うらやましげなため息があちこちからもれる。
「ああ、負けた!」
「三百年もトランプをやっているのよ。そう簡単に負けるものですか」
「あ〜あ……今回こそ勝ったと思ったんだけど」
 少女はテーブルから身を乗り出し、ついさっきまでポーカーで勝負をしていた青年の首筋に唇を当てた。
 血をすすっていたのもほんの数秒、牙を抜いた少女と青年の首筋の間に、血の糸が引いた。
「大丈夫? 記憶吸いすぎたかしら?」
「大丈夫ですよ。俺、いろんな経験もしてるし。ちょっとやそっと吸われても」
「いいなあ」
 村に集まった中でも一番幼い十歳の少年、泉浩太(いずみ・こうた)がうらやましげに呟く。
「ホリィ様に血をあげられるって。オレだってあげたい」
「あなたは子供でしょう? 記憶が少ないから、ダメ」
 少女……常葉聖良は浩太の鼻をピンと弾いた。
「あと五年待ってちょうだいね? ……ああでも、五年後が来るかしら」
「ホリィ様?」
「ホリィって呼んじゃダメ。悪魔が来るから。あなたたちを殺そうとする『ドレーガ』が来るから」
「『ドレーガ』って、殺せないの? 殺せるならオレが……」
「それは、〈始祖〉様しか知らないことなのよ」
 聖良はにっこりと微笑んで浩太の頭をなでた。
 満月の光の中、男は遠くからその様子を眺めていた。
「常葉聖良……ホリィ・エヴァグリーン。こんな東の果ての……しかも忌々しいアレクサの支配圏にいるとは」
 背の高い黒髪の男は、忌々しげに呟く。
「三百年も私から逃げおって……。しかもあんなに『ロアド』を増やすとは」
「どうなさいます、ロジック様」
 傍らに控えていた『ロアド』の青年が支配者を見上げる。
「我が支配下の『ロアド』に通達」
 ロジック・グレイは振り返り、青年を見た。
「次の満月の夜、あの邸宅を襲撃する。あそこにはホリィのほとんどの『ロアド』が集まると見た。ホリィの『ロアド』どもを皆殺しにして、ホリィの肉体だけでも手に入れる」
「では、そのように」
 青年は携帯電話で仲間たちにそのことを知らせる。
「ホリィ……愛しきホリィ」
 ロジックはうっとりと呟いた。
「かつて私が愛した血族の娘……私手ずから『ドレーガ』にした少女……私の前から血族ごと消え、三百年も逃げとおした『ドレーガ』……」
 ゆっくりと手を握る。
 それが合図だったかのように、青年は身を引いた。
「大ゲームに共に参加するか……断って、すべての『ロアド』を滅ぼされ、肉体を私に差し出すか……。二つに一つだよ、ホリィ」
 ロジックは喉で笑う。
「直接戦闘になれば、お前が私の『ロアド』を滅ぼすより、私がお前の『ロアド』を滅ぼすほうが早い。そしてお前が私の『ロアド』を殺せるとも思えない……」
 ロジックはゆっくりと村の奥の邸宅に向かって手を突き出した。
「お前は私のものになるのだよ。嬉しいだろう? ホリィ……」
 
【シナリオの目安】
危険度:★★★★★
対応人数:〜50名
キーワード:『初回から死亡あり』『描写重視』『シリアス』『〈始祖〉』『戦いと調査』『狂った愛情』『母性本能』『逃避行』『秘密と謎』
 
 
 
ホルト家と猫
マスター:岩下恭八
 
《獣たちの災難》
「ねえ、あれってもしかして……」
「また? 何でこんなことするんだろ? ほんと酷い」
 登校中の生徒が二人、道の脇に放置されているそれを見つけ、憤っていた。
「ちょっと見てくる」
 顔から血の気の引いた友人を残して、それに近づいていった加奈美は、ムッとする血の臭いにあわてて手で顔を覆った。殺されたイヌの死骸だった。
 最近、この辺りでは嫌な事件が相次いでいた。動物が殺されて、無惨な死体が路上に放置されているのだ。
 主に、ペットとして飼われているイヌやネコが標的になっていた。むろん警察も手を尽くしているが、思うように進んでいないらしい。
 
《ホルト家の災難》
 同じ頃、古い『ロアド』の家系であるホルト家にも、ある災難が降りかかっていた、誰かがホルト家の『ロアド』に、次々と襲撃をかけているのだ。
 今までは第三者が運良く通りがかったりして助かっていたが、先日、ついに重傷者が出てしまい、長老たちの話し合いの結果、「Alexa」に頼ることが決まった。
 今までは慎重に距離を取っていたが、長い間『ドレーガ』と連絡が取れていない以上、異論はあったがほかに手だてはない。ただ警察に頼って事を大きくするのは得策ではないというのは共通した意見だった。
「では、そういうことでいいかな?」
 ウィリアム・ホルトは一同を見渡し、念を押すように言った。壮年の眉間には心労から来る深いしわが刻まれている。よりによって数年に一度、習わしに従って極東の国日本に一族が集まるこの時に、こんな厄介ごとに巻き込まれるとは予想外だった。
「むしろもっと早く接触すべきだったのよ。どこかに“彼”がいる以上、いずれ厄介なことに巻き込まれるのは分かっていたことでしょう? ルイス」
 そう声を上げたジョアン・ホルトはルイス・ホルトに目をやった。“彼”とはホルト家の『ドレーガ』のことだ。
「まあ、決まったことには従います。ただ私が反対したことだけは覚えておいてくださいね?」
「じゃあどうすればいいというの? このまま黙って襲われ続けろとでも?」
 カッとして詰め寄るジョアンを、ほかの者があわててなだめる。ウィリアムの眉間のしわは、ますます深くなるのであった。
 数日後、ホルト家は巨額の報酬と引き換えに「Alexa」と契約を交わした。一族に危害を加える何者かが排除されるか、一族が日本を離れるまでの期間つき護衛契約だ。
 「Alexa」側としては、ホルト家の提示した巨額の報酬も魅力だが、ホルト家を「Alexa」グループの一員として迎えようと画策している。ホルト家の勧誘に成功した者には「Alexa」グループ全体の動向を左右する『円卓会議』の席が用意されるだろう。
 
《獣たちの災難・再び》
 学校からの帰り道、加奈美は花屋に寄った。酷い目にあったイヌに、せめて花でもと思ったからだ。
(成仏しますように)
 現場に着いた彼女は、手を合わせながら黙祷をした。
 罪のない動物たちにとっても、それを可愛がっていた飼い主たちにとっても、本当に災難続きだ。
 数日前、同じ道を歩いていたときも、小さい女の子が懸命に背伸びをしながら張り紙をしていた。何だろうと思って近づくと、つたない字でこう書かれていた。
『ろばーとどっかにいっちゃった。だれかさがして!! まだちっちゃいの。るしあ』
 紙にはシャム猫の写真が貼られている。まだ1歳になっていなさそうな、子猫だった。
「ネコ、どっかいっちゃったんだ?」
「うん! ろばーと、どっかいっちゃった! だからさがしてるの。おねえちゃんもさがしてくれる?」
 元気よく振り返った女の子の目が、加奈美を見つめる。
 ハーフらしい顔立ちに、黒髪のツインテールの映える大きな目で見つめられて、加奈美はくらっとした。
 可愛いものには目がないのだ。
「任せて! きっと見つけてあげるから!」
 ――そして今日のこの事件。あの子もきっと心配しているだろう。近いうちに、知り合いにでも声をかけて、ちゃんと探さなきゃ、と加奈美は決意した。
 
【シナリオの目安】
危険度:★★★
対応人数:〜30名
キーワード:『ゲーム性重視っぽい』『謎解き?』『陰謀ものかも』『狂気』『溺愛』『動物』『守ったり守られたり』『頼りにならない』『因縁』『逃避行』『そろそろ限界』『彼女のためなら』『こじれた関係』『第三者の横やり』
 
 
 
東京ジオフロント
マスター:獨伝把奥朗
 
 関東大震災後、東京地下に作られたという巨大な地下空洞があった。大戦後の混乱で、存在そのものが忘れられたそれは近年再発見され、我らがalexa資本によって地下遊園地、地下繁華街、特定顧客にしか販売されない地下別荘街へと生まれ変わった。
 それが東京ジオフロントである。
 そして今、業界筋にある情報が流れていた。
 その東京ジオフロント内にて、とある『ドレーガ』が主催する殺戮武闘会が開かれるというのだ。
 この武闘会には『ドレーガ』を倒せるという、特殊な『黄金の銃弾』が賞品として用意されているという。
 
 普段はジオフロント名物『冥界戦隊ヨミレンジャーショー』とか行われていて子供たちに大人気の場所がこのステージ前だった。だが、深夜の今は、あきらかに腕に覚えがありそうな猛者たちが集っている。
 だが、受付にいるのは周囲から明らかに浮いている3人、バニーガール姿の女と小学生にしか見えない娘、それに顔の上半分を覆う仮面を被った白衣の男だった。
「はい、第一回殺戮武闘会の説明会場はこちらです。主催者みずから説明しますのでお待ちください」
 娘は猛者どもに物怖じしたようすもなく、子供らしくないはきはきとした受け答えをしている。対して、外見年齢がその娘の軽く二倍以上はありそうなバニーガールは思いっきりダレていた。
「あー、面倒だわー。なー、あたし帰っていい? やりかけのエロゲーがあるから」
「わけのわからない理由で帰ろうとしないでください。バニー警備部長」
 外見そのまんまの名前で呼ばれているらしい。
「いちいちうるさいにゃー、ようじょは」
「私の名前は『ようじょ』じゃなくて『かなめ』です」
 ちなみに、字は『要女』だ。フルネームは吉外要女。
「忙しいならマスクドがようじょを手伝えば?」
「いや、私は通常の3倍だからな」
 仮面の男―マスクド吉外―は、石でできているらしい仮面を撫でながら言った。
「言っている意味わからんって」
「まあ、若さ故の過ちだな」
「ますますわかんないわよ。ねえようじょ」
「私の名前は『ようじょ』じゃなくて『かなめ』です」
 
 その頃、ステージは異様な盛り上がりを見せていた。ドラムの音が高らかに鳴り響き、スポットライトがステージの中央を照らし出す。そして、ステージ中央に開いた穴からある人物を乗せた台がせり上がってきた。
 その人物を一言で言うと派手だった。漢は背中で語るとでも言いたいのか、後ろを向いたままのかっこいいポーズでせり上がってきたその姿は、黒地に縦横に銀糸が走るスーツを着ており、背中には大蛇アナコンダの金糸の刺繍が縫いこまれている。広げた両腕にはそれぞれ、黄金のマイクと黄金のリボルバーが握られていた。
 その派手男が振り向くなり、マイクに向かって言う。「諸君、よくぞ集まりやがった! 俺がこの殺戮武闘会の主催者、グールマンだ」
 聴衆はどよめく。グールマンなどという名の『ドレーガ』は誰も聞いたことはなかったからだ。もっとも、彼が本名を名乗っているとは限らないのだが。
「この殺戮武闘会には2つのルールがある! 1つは場所! 第一回武闘会は、東京ジオフロント内の巨大迷路内で行う! 期間内は自由にそこで殺し合って良し! ただしそこから出たら良い子にすること!」
 ジオフロント内には確かに多層構造の巨大迷路が存在していた。
「そして、もう1つ、使用武器を限定する。これ以外を使った攻撃は、例え素手でも不許可だ!」
 銃を使っちゃダメとかそういうことか、と聴衆はグールマンの次の言葉を待つ。
「第一回武闘会の使用武器は『こんにゃく』だ!」
 なんだそれはー!? と、一斉に聴衆はブーイング。
「なんでこんにゃくかだって? 昨日の晩食ったおでんが美味かったからだ! 文句あるか?」
 そこまで開き直られるとどうしようもない。
「そして、俺を一番楽しませた奴には……『ドレーガ』を倒せるこの黄金の弾丸を進呈しよう。さあ、貴様ら、もっと俺を笑わせろ!」
 
【シナリオの目安】
危険度:★★★★★
対応人数:〜100名
キーワード:『死者が頻発する殺戮武闘会』『と見せかけて死者が頻発する殺戮変態大会』『シリアス希望』『死ぬのを前提としたギャグ大歓迎』『毒電波』『生と死』『バトル』『不条理』『狂科学者』『ここは笑う所です』
 
 
 
少年×吸血鬼
マスター:正田川太郎
 
「ショタ吸血鬼は少年に恋をし続ける」
〜亡国の詩人ショタスキー・マヂデスキーの詩〜
 
 通された広間はまるで外国映画で登場するような城のホールのようだった。正面には2階へと続く大階段。自分の前には、にっこりと微笑むメイドが立っている。
「竹様が募集したヴァンパイアハンターの方ですね?」
 黒を基調としたメイド服を着た眼鏡メイドが屋敷の奥へと案内する。いくつものドアが続く廊下。どこが果てかわからない。こんなに広い邸宅が日本にあるなんて。
 それを察したのか、メイドが話しかけてきた。
「驚いていらっしゃいますね。でもこれが姉倉家のお住まいなのです。お客様もご存知の通り、社長の姉倉芳文様は代々続いてきた姉倉玩具屋を、日本に多数の店舗を持つまでに大きくしたお方。『姉倉屋トイズチェーン』と言ったら知らない人はいません」
 メイドの肩に乗った『パートナー』が誇らしげにピンク色に染まってはふぅんとため息をついた。姉倉屋といえばいま小中学生を巻き込んで一大ムーブメントを起こしているこの『パートナー』の販売で巨万の富を得ている会社だ。メイドは扉の前で止まった。
「さあ、こちらのお部屋でお待ちくだ……」
「冗談じゃないわっ!」
 メイドが開けようとした扉が勢いよく開いた。少女のなまめかしい白い足が扉を蹴り開けたのだ。室内からとびっきりの美少女が飛び出てくる。ふわっとストレートの黒髪が広がった。少女は怒りに顔を紅潮させている。
「まあっ花音さん! ドアを足蹴にして行儀の悪い! そんなことではお相手の方に嫌われますことよ」
 ヒステリックに叫ぶ中年(とはいえこれまた妖艶な)女性が少女を呼び止めた。
「何がお相手よ! 会社のための政略結婚でしょ」
 毅然とした態度の少女。瞳は怒りに燃えながらもきらきらと魂の美しさを映し出していた。
「待って、花音。もっと落ち着いて話をしよう」
 魅力的なバリトンの声音が少女を止める。少女とは対照的にその声は落ち着きを孕んでいる。
「確かに花音の気持ちはわかるよ。だけど姉倉屋の未来が花音にかかっていることも確かなんだ」
 少女の前に少年が進み出た。年は少女と同じくらい。
 茶色がかった髪。女性のような顔立ちの美少年だ。
「麗人……あなたには私の気持ちなんてわからないわ」
 悔しそうに下を向く少女。麗人が肩に手を乗せる。
「だがお父さんが病気の今、この姉倉を支えていくのは君と僕なんだよ。ジュンはまだ幼い。正妻の子の君と、君の弟が成人して姉倉屋を継ぐその日まで僕は……」
「麗人義兄さん(にいさん)」と花音。
「んまあっ! 正妻などと……おっしゃらないでいただきたいわ、麗人。前の奥様亡き後、いまや姉倉芳文の正式な妻はこの私。姉倉竹が妻なのですわ。まして麗人さん。あなたは間違いなく私と芳文の間に産まれた子。姉倉を継ぐ資格は十分にあるのですよ!」
 コホン、とメイドが咳払いをした。はっと気がついたように姉倉一族の動きが止まった。
「あの。ヴァンパイアハンターの方が……」
 竹が大袈裟にため息をつく。
「ああ、やっと来てくれたのね。待っていたわ。花音の婚約発表も近いというのに最近屋敷の中で不審な人影が現れるようになって……それが吸血鬼だとメイドたちは言うのよ。私の大事な麗人さんにもしものことがあったらと思うと夜も眠れなくて。ぜひあなたがたにお願いしたいというわけなよ。ヴァンパイアハンターさん」
 その時、悲鳴が屋敷の奥からあがった。
「ジュン!」
 走り出した花音の後に続いて悲鳴の聞こえた部屋へと向かう。花音が扉を開ける。同時に部屋から真っ白な濃霧が噴出してきた。霞の向こう、ベッドの上で幼い少年が裸で……そう! 一糸纏わぬすっぽんぽんで震えながらシーツを握り締めていた。もうそれだけで大興奮。
「ああ、ジュン! そんな格好で風邪をひくわよ」
 いや、この場合は風邪をひくかが問題なのではなく、『なぜ半ズボンを履いていないのか』のほうが問題だ。
 ジュンは涙を流しながら言う。
「僕っ、パンツ盗られちゃった」
 パンツだけ盗られたはずなのに全裸だった。
 なぜだ。なぜなんだ!!
 
【シナリオの目安】
危険度:★
対応人数:〜30名
キーワード:『おっす! おらショタ』『ハァハァ萌え〜』『ショタ王国は本当にあったんだ』『パンツぐらいは履いておきたまえ!』『少年萌え』『お家騒動』『ヴァンパイアハンター急募』『描写重視』
 
 
 
 
 
 
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