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初期情報04
 
 
 
大阪頂上作戦
【担当マスター】山城一樹
 
 
 
「オラァ、待っちゃれやぁ〜!」
 路上にて、突如聞こえてきた罵声に、主人に随伴中の風魔篠青[ふうま・ささお]が咄嗟に身構えた。
 目を向けると、はるか向こうから一人の少女が逃げてくる。複数の、むくつけき獣人――ディアティたちに追われている。
 三つ編み髪のその少女は半ば、裸に剥かれている。同じロードの貞操の危機に、思わず篠青がかばってしまう。
「寄ってたかってこんな子供に何をする!?」
 キッとディーヴァたちをにらみつける篠青だが、
「ハァ? ド頭沸いとんか、ワレ? 暇潰しに犯してから嬲り殺すに決まっとるやないケ。考えてモノ言えよ」
「よォ見たら、ええ女(タレ)やないの。おまえもロードやろ! ちょっとワシらについて来いや」
 不作法な手で篠青のポニーテールを掴むディアティ。水色の小袖に若干の鎖帷子を身につけただけの彼女は、彼らにとって、脅威に思えなかったのだ。
 その毛むくじゃらな手を、小柄な人影が払いのける。篠青の主人の少年だった。
「篠青はボクの従者だ。それに、女性に手を出すような恥さらしはやめろ」
「このボケ……何様のつもりやねん! 大阪最強の竹内旅団に標準語でイチャモンつけくさって!」  獣人が怒りにまかせて、少年の軍帽を払うと、狼耳があらわになった。銀髪の下で紅眼が獣人を見据えている。
「ディーヴァの元帥・政宗伊織[まさむね・いおり]の命令だ。下がれ」
 伊織の気迫に、ディアティたちは気圧されたようだった。
「アンタが、この間、最年少で元帥になった言う坊ンかいな?」
「そうだ。それとも、ボクの力を試してみるか?」
 異性のロード二人を庇護し、ディアティたちに挑む伊織。やがて、ディアティたちは諦めたようだった。 「アホ臭……ロード庇って、竹内旅団に喧嘩売る気ィかいな。まあ、竹内のオヤジもアンタと構えるつもりはないさケ、今日はアンタに免じて引いとくわ」
「しゃあけど、この大阪でロードに情けかけるいうんは、ディーヴァの看板に砂かけるようなもんや。たとえ最高幹部のアンタでもな。よォ覚えとき」
 捨て台詞で場を取り繕うと、位負けしたディアティたちは少女を残して立ち去っていった。
 ホッと胸をなで下ろした篠青が、少女のほうへ笑顔を向ける。
「もう大丈夫よ」
 だが、少女は、鋭い目で伊織をにらんだ。
「ロードを助けるなんて、どんな気まぐれ?」
「気まぐれって……」
「こんな……こんなことされたからって、許さないんだから……私たち大阪のロードは、未来永劫、あなたたちディアティを呪い続けてやるわ!」
 恩に対して礼も言わず、悔し涙をこぼしながら呪詛だけ吐き捨て、少女は駆け去っていった。
「坊ちゃま……」
 年上の従者が気遣いの声をかけるのを、伊織は首を振って拒否した。
「ボクも所詮は大阪のディアティ――それも最高幹部なんだから……あの娘の態度は当たり前だよ。
 ロードのあの娘からすればね……」
 少年の名は、先ほど名乗った通り、政宗伊織[まさむね・いおり]と言う。――年少ながらもディーヴァ最高幹部連『十将会議』の末席に名を連ねる人物だ。
 大別して一般兵→曹官級→尉官級→佐官級→元帥級と位付けするディーヴァの軍制で、十将会議は元帥級のみで構成された最高諮問会だ。定員十名で、その権威はシヴァに次ぐ。
 なお、元帥級になると、本来全将兵がシヴァの直轄であるはずのディーヴァでも特に『旅団』と称される私兵部隊を編成することが許可される。
 この、いわば分家制度は、かつてディーヴァの母体がヤクザ組織だった頃の名残らしい。元帥は自分の才覚で、舎弟や子分を集め、旅団を結成できる。
 たとえば、元帥の一人・竹内主税[たけうち・ちから]の竹内旅団や、政宗伊織の政宗旅団のように。
 ――さて、大災害後ディーヴァがロード迫害政策を施行して以来、支配下のロードはあらゆる権利――生存権も財産権も何もかもを剥奪され、ヒエラルキーの最下層たるを強いられていた。
 ディアティ優遇ロード迫害を国是とするディーヴァでも、大阪はロード迫害が最も苛烈な土地柄だった。
 あるロードは従順さゆえに奴隷として、あるロードは見目良さゆえに愛玩弄玩用のペットとして、またあるロードはおもしろ半分の虐殺用として、この大阪で戦々恐々と飼われている。
 中には密かにロードを援助しているディアティもいるようだが、おおむね、先ほどのような輩が多い。生きていることが幸運なのか、死んでいないことが不幸なのかもわからないような生活を強いられているのだ。
 息をしていることさえも、ロードの死亡理由になりかねない――それが大阪という街だった。
 遠望すると、ディーヴァ総本家として大災害後改築され、より威容を誇るようになった大阪城がそびえている。
 高い城壁、深い濠……まさにディアティの要塞と呼ぶにふさわしい。
 この奥深くに、大阪の暴君――支配下のロードの全ての不幸を生み出した男――シヴァ[−]が君臨しているのだ。
 大阪城の足下には、城下町が広がっている。
 そこでは数多くのロードが全ての権利を剥奪され、酷使されている。いや、大阪だけでなく支配下全土で。
 誰かが、ディーヴァの主権者がそれを変革しない限りは、この構造は未来永劫変わらないだろう。
「それより、調査結果は?」
 主人の質問に、篠青が回答した。
「十将会議の面々を調べたところ、幹部の一人、金田義時[かねだ・よしとき]に不穏な動きがあります。
 具体的な証拠は、今後の詳しい調査が必要ですが、どうやら……大阪のロードから金品・貴重品を取って、国外逃亡の手助けをしている気配です。それも、ほとんどは金品だけ騙し取って、国境近くで始末しているとか……」
「ロードが勝手に逃亡したならまだしも、ロードの国外逃亡を幇助したとなると、スキャンダルだね。きちんと証拠を集めて十将会議の議題にすれば、処罰の充分な理由になる。そしてボクらの手で後始末すれば、後釜をとる大義名分になる」
 伊織はある目的のために、ディーヴァ権力の座を奪おうとしていた。同志を集め、ディーヴァの頂点を……中枢を奪取しようとしていた。
「よし。ボクらの――政宗旅団の最初の標的は、金田だ。十将会議の座を奴から、ボクらの派閥で奪うんだ。
 ボクは……絶対、この街の頂上……トップを取ってみせる。それまで、どんなことにも耐えるって、どんな汚いことにも手を染めるって決めたんだから」
 少年の熱く昏い決意に、篠青は悲しくなった。彼女は、唯一、伊織の過去を知る人間である。それでも声に忠義を込めて、
「はい。政宗旅団は――私は坊ちゃまに従います。理想を実現する、その時まで」
 ロードである実兄を、ディーヴァの迫害政策のために殺された伊織の理想――ディーヴァのロード迫害政策を根絶する、その日まで。
 
シナリオ傾向など
推奨対応人数 ★★
最大対応人数 ★★★★
シナリオ危険度 ★★★★★
キーワード 『仁義なき戦い』『群像劇』『権力・派閥闘争』『ロード危険遭遇度高し』『描写重視』『暴力描写あり』『一部18禁もあり』『大阪』『ヤクザ』『外道』『無法地帯』『功績次第で大抜擢』『親分が黒と言えば雪も黒い』『愛憎劇』

イラスト=桜瑞
 
 
 
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