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初期情報01
 
 
 
KINGS
【担当マスター】黒川実/孝岡春之介/高崎とおる
 
 
 
 2008年3月28日未明、新宿御苑を中心とした大規模な火災が発生した。
 この一帯はディアティ化した植物によってつくられた森林地帯だったが、彼らがいずれもロードに友好的で、凶暴な個体の存在が確認されなかったことから、能力の弱いロードが集まる居住区域と化していた。
 火元は彼らが暮らす共同住宅のうちの一軒だった。
 真夜中の出火だったこともあり、御苑に住むロードの大半が焼死、森林の9割が延焼したという。
 現場で消火と救出に当たったアイオーン新宿支部は、一部の遺体に、幾つか不審な点があることに気づいた。
 出火元付近で収容された遺体には、いずれも獣の牙や爪によるものと思われる傷痕や、凄まじい怪力で手足や首を引きちぎられたような痕跡が発見されたのである。
 アイオーンは外部から来た鳥獣系のディアティによる無差別殺戮と見て調査を開始したが、事件から2週間が経過した現在も、未だ襲撃犯は見つかっていない。
 
◇     ◇     ◇
 
「……でね、もうシンジュクは暮らせなくなったので、よそに行こうと思ったです」
 三毛猫娘のネム[−]はそう言って話を締めくくり、二股に割れた尾の先で、ぱたんと地面を叩いて見せた。
 以前は花園神社に住み着いていたネムは、新宿御苑の事件以降、弱いディアティに対する迫害や差別が公然と行われるようになった新宿を離れ、関東を離れて西へと向かう一団に加わった。
 文明崩壊以前は人々から東名高速と呼ばれ、この国の東西を結ぶ大動脈だったハイウェイは、今は異常繁殖を起こした様々な種類の植物たちに侵食され、宙に架かる緑の橋へと変貌している。
 日も暮れた旧海老名サービスエリアには、ぽつぽつと焚き火を囲んで語り合う人々の姿が見える。
「関西はディーヴァが圧倒的に強い。ロードなぞ家畜か奴隷程度にしか扱われないから行くなら気をつけて」
「東はロードの天下だ。ディアティには住みにくいな」
「アイオーンはロードを中心とした新たな秩序の形成を目標にしているから、関東はディアティだけじゃなく、ディアティと共存したいロードも住みにくい場所だね」
 新しい薪を折りながら『事情通』が相槌を打つ。
「以前は電車に何時間か揺られれば、関西でも九州でも好きなところに行けたけど、今は最も確実な交通手段が足だからねえ……どんな危険が待っているか分からない世界を行くには道連れが多いに越したことはない」
 安住の地へと至る道程は、まだまだ果てしなく遠い。
 
「――御苑といえば、こんな噂を聞いたな」
 夜も更けて、焚き火を囲む人たちの口数も減った頃、思い出したように『事情通』が口を開いた。
「新宿御苑に主劍『エクスカリバー』の所持者がいて、ディーヴァの過激派が新宿御苑を急襲したが逃げられ、腹いせにロードたちの虐殺を行なったとか……」
 突飛な話だが妄言だと笑い飛ばせない理由があった。
 2007年8月、新宿区内に落成するはずだった博物館の第一回特設展示が『アーサー王と円卓の騎士展』であり、企画の目玉は、イギリスのとある湖底から見つかったという触れ込みのグレートソードだったからだ。
 宣伝用のポスターには、柄に赤い龍の紋章が刻まれ、何百年も湖底にあったにしては錆ひとつ浮いていない、巨大な両刃の両手剣が掲載されていた。
 この企画は各方面の識者や専門家の失笑を買ったが、噴気の影響で世界が一変した後は、強力なロードだったアーサー王の実在と、主劍エクスカリバーから力を得た王が、小規模なペリュトーンの噴気によって滅びかけたブリテンの人々を救った“事実”が一般常識となった。
 博物館には種族を問わず様々な人々が殺到し、血眼になってエクスカリバーを探した。
 しかし、ついにエクスカリバーは見つからず、主劍は付近に住む何者かによって持ち去られたのだという噂がまことしやかに囁かれていたのである。
「そんなに便利な劍があるなら、すぐ使えばいいのに」
「エクスカリバーがあればいいって訳じゃないんだよ。正しい劍の持ち主が、正しい場所で儀式を行わないと」
「……あの……」
 背後から響いた細い声に『事情通』は講釈を中断し、肩越しに背後を振り返る。
 声の主は見た目、十三、四の少女だった、黒髪を肩で切り揃え、何処かの制服らしい黒のワンピースの上に、同色のショールを羽織っている。
「……お話の邪魔をしてごめんなさい、さっきのお話、よろしければ詳しく聞かせていただけませんか?」
「ああ、エクスカリバーの話かい?」
「いえ、そちらじゃなくて、新宿御苑の……共同住宅に住んでいた人たちの……」
「もしかして新宿御苑に知り合いでも?」
「――サヤ!」
 少女が口を開きかけたとき、少し離れた焚き火から、鋭い声が飛んできた。少女はびっくりして首をすくめ、困ったように眉根を寄せて振り返る。
「おにいちゃん」
 少女に駆け寄ってきたのは、ボロボロの学生服を着た少年だった。赤茶けた髪の下から覗く暗い瞳は、どこか張り詰めた雰囲気を漂わせている。
「もう寝ろって言ったろう? 夜更かしするとまた咳が止まらなくなるぞ」
「うん、ごめんなさい……」
 こくりと頷く妹の頭を不器用に撫で、焚き火を囲んだ人々に無言で一礼すると、少年は妹の肩を抱き寄せて、自分たちの焚き火に戻って行った。
「……そんなにすごい劍だったら、アイオーンの人たちも放っておかないと思うですが……」
 ネムは小さくぽつりと呟くと三毛の仔猫に変身して、仲良くなったばかりの少女の寝床にするりと潜り込み、ごろごろと満足げに咽喉を鳴らし始めた。
 
◇     ◇     ◇
 
 2008年4月15日早朝。
 アイオーン総務班班長、籠原雪[かごはら・ゆき]は、主劍エクスカリバー追跡に関する全権を委任され、同僚たちと共に新宿御苑へ赴いた。
 遊撃を主とする総務班の人員は、性質上、単独行動を好む傭兵気質の連中が多い。籠原は総務班では数少ない常識と中庸と建前を理解できる人材だと言われている。
 横浜本部では博物館のポスターから写した劍の写真とエクスカリバーを所持している兄妹の似顔絵以外には、特に有用な資料は手に入らなかった。
 生存者の証言を照合した結果、新宿御苑を焼き払い、無辜のロードを殺害した外道は間違いなくディーヴァ、それも生粋の外道と名高い雪狼一派だと判明した。
 が、連中の死骸らしきものがなかったところを見ると主劍は既に御苑を離れていたということになる。
「上層部のお偉方は、エクスカリバーと劍者を関東から出してはいかんと仰せだ」
「また例によって例のごとく無茶ぶりですな」
「案件が総務に回ってくるのは常に事態が悪化してからなんだから、いつも通りと言えないこともないけどね」
「しかし確かに他の勢力の支配領域に入られては色々と厄介ですよ。早く蹴りをつけるに越したことはない」
 班員たちの応酬に、籠原は淡々とした口調で答える。
「主劍及び劍者の身柄を確保せよ。障害は各自の判断で排除、雪狼の戦争狂どもと鉢合わせる可能性が高いので家族のある者は事前に遺書を書いておくこと――以上」
 具体的な作戦や配置の指示などは行われない。上官の指示がなければ動けない者は、総務には不要とされる。班員たちは、それぞれ資料を手に散開していく。
 エクスカリバーは、アイオーンの目標とする新世界の秩序を築くために必要な存在だ。何があろうと他勢力に渡すわけにはいかない――たとえどれだけ大きな犠牲を払うことになったとしても。
 
シナリオ傾向など
推奨対応人数 ☆(1〜3)
最大対応人数 ★
シナリオ危険度 ★★★★
キーワード 『描写重視』『メイルゲームクラシック』『英雄の劍』『ロードムービー風味』『聖地探索』『エクスカリバー争奪戦』『貴方が最期に帰りたい場所は何処ですか?』
 
誌上シナリオ『KINGS』について →

イラスト=桜瑞
 
 
 
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