『水専流し――落ちたらボットン』
弓月つかさ Yumitsuki, Tsukasa

「……今年もまた、恒例の実地研修が新学期より開始されることとなった。それぞれが今までに培ってきた技術やセンスを存分に発揮し、各自に課せられた課題をクリアしてもらいたい……」
　と仰々しい挨拶を熱心に聞く者は多くない。
　ここは八十神学院の特設校の一つ、水商売専門特設校。通称『附属水専』もしくは『水専』。将来の夜の仕事を担うスペシャリストを早期から育成するために設立された今までに例を見ない特殊専門特設校である。授業内容も接客業の基本から細かなテクニック、営業の方法など夜の商売には絶対に必要な技術が教え込まれている。
　その実践とも言うべき実地研修が、9月の新学期より開始される――各学科により異なる内容は5つ。
 
・接客科：キャバクラやクラブ、ホストなどの主にトークなどでお客様のお相手をする仕事。基本は本番無しの寸止めだが、生徒の中にはノルマ達成のために身体を張る者もいる。
・風俗科：こちらは身体でお客様の快楽の相手をする仕事。本番の有り無しは場合によるが、こちらは抜いてナンボの世界。
・性転科：ニューハーフ、もしくはおなべの世界。接客のみもあれば本番もある場合も。どちらかというと同性との関係を好むもの向け。
・特殊風俗科：上の三種にあてはまらない特殊な世界。女王様だったり、イメクラなどのコスプレ、もっとマニアックで特殊な趣味のものは全てここに入る。ちなみにメイドさんもこちら。ここだけは何でもあり。
・黒服科：このようなお店を仕切る黒服、もしくは店舗責任者を養成する。キャストやタレントと呼ばれる女性（男性）の世話をして、お客様のクレームを処理するなど、影になってお店を支える。
 
　――どの分野を選ぶか、それは生徒の希望が優先される。勿論、自分は向いていないということで、別の学科に変更することも可能だ。
　生徒はこの実習において、前月の結果より決められたノルマを達成させなければならない。成績はこのノルマの達成率によって弾き出され、毎月表示される。そして、最下位の者は、翌月成績上位者の命令を聞くパシリ、もしくは下僕、分野によっては奴隷やペットとして扱われる厳しい罰ゲームが行われる。優勝者は表彰され、賞品が手渡されるのがこの実習の決まりとなっている。
　実習先の店舗は水専の施設が利用され、実習用の教室がこの期間だけ店舗として解放される。先生も監督者としてそれぞれのお店で生徒たちの様子を観察し、成績の参考にしている。この期間だけは水専の生徒以外に他の分校生徒や卒業生、八十神の学生や教師が誘いにつられてやって来たりして、一つの歓楽街が学校内に形成されることとなる――
　壇上ではそれぞれの主任とも言うべき5人の教師が挨拶をしていた。接客科の南カナ、風俗科の水守あかね、性転科の三輪環、特殊風俗科の美崎麗、そして黒服科の御神響――御神以外は全てそのままお店に出てもおかしくない女性の姿で麗しい脚線美と大小さまざまな胸の谷間を生徒たちに見せ付けている。実際に受け持つ学科のスペシャリストだったという噂も生徒の間では流れている。互いに笑みを浮かべてはいるが、学科の間ではライバル関係があり、反目していたり、仲の良くない学科はある。だが、それも笑みの下に隠されて窺い知ることは出来ない。
　営業スマイルにも思える笑みを見つめる生徒は欲情していると言うよりも、憧れの眼差しで並ぶ先生を見つめている。いずれは卒業し、あのように第一線で活躍する事を信じて――最初は乗り気でない生徒たちも、次第に見つめる視線に熱を帯びてくる。
　そもそも、この水専に来る生徒は殆どが他に行くところも無く、家庭の事情や個人の事情により仕方無しにやってくるような生徒ばかりだ。小遣い欲しさに危険を冒して売りやいかがわしいお店に走るより、ここで正しい技術と営業を身につけた方が将来的に有望であり、成績次第では自分の稼ぎが倍増する。それに、この水専は学校のランクでは底辺に位置し、水専ぐらいしか行くところがない生徒や、家庭の環境により他の特設校に行くことも出来ない生徒が最終的に送り込まれるような学校である。開き直った者の強さがこの水専にはあった。
　当然、そんな水専を良く思わないものは多い――水専を水洗に例えられるのは、八十神では日常的に良くあることだ。付いて行けず、水専を去るものは水専以下――「ボットン」と学院で揶揄される。在学中に手の早い店からスカウトされたのか、卒業前に消えてしまう生徒もいる。だが、卒業した生徒の方がしっかりしているのか、お店では大切に扱われているようだ。
　それぞれの主任教師から挨拶があり、後は生徒がそれぞれ好みの学科を選び実習を開始される。自分に合わないと思った場合は別の学科を選択することも可能だ。ただし、成績が良くない学科に関しては途中での中止――つまり閉店も有り得る。潰さないように、学科の生徒は必死に営業を行うことになる。
「まずは全体で説明を行い、希望する学科の軽い実習から開始する……希望者はそれぞれの学科の教室……いや、店舗に向かうこと……なお、勝手な行動は極力慎むこと。勝手に始めたり、一人でナニするのは構わないが、後始末は誰もしてくれないからな……自分で処理しとけよ……では、解散」
　御剣の言葉を合図に生徒たちは、それぞれ希望する学科へと散っていった――
 
〈このシナリオを選択する際の注意〉
　アクションを作成する際、自分が希望する学科を必ず記入してください。そして、生徒として実習するのか、お客として遊びに来るだけなのか、目的をハッキリさせてください。エロだけして終わるのは飽きるので、それなりにPCの設定や好みの方法やシチュエーションや内容なども書いてあると助かります。
　実習生として参加する場合は、「技術（色々な技を覚えます）」「接客（お客さんとの触れ合う方法や営業方法などを覚えます）」「美貌（自分の体の手入れや衣装の選択などで自分を磨きます）」のどの分野に力を注ぐか、1、2、3番の順位をつけてください。
　この力の注ぎ具合と、所持している記憶、そしてアクションの内容によって順位は決定されます。
　最も優秀だった1位の者は最下位の者を翌月、生命の危険がない限り好きにすることが出来ます。
 
 
 
【シナリオ傾向など】
対応人数 一応制限なし
キーワード 「とりあえずエロ」「偏ったエロ」「子供は来ないように（18禁）」「裏筋あり」「ジャンルによってはグロ」「たぶん耽美」「きっと恥辱」「部分的にシリアス」「多少数値的ゲーム」「女王とか嬢王とか夜王とか」「ノーマルよりもアブノーマル」「不幸だったり、隠した秘密があったり」
推奨『属性』 【知性】より【魅力】それよりも社交性
 
【選択肢】
A010900【魅力】「水専で実習を」