運命準備委員会 Sommerbrautは寂かに告げる
 


 
 
 
ルール解説
 
 
 
『闇の生徒会』
獨伝把奥朗 Dokudenpa, Okurou
 
 旧校舎。
 そこはそう名前が付いている以上、当然のことながら旧かった。旧校舎のすぐ側の地面を掘り返したら、カンブリア紀の化石が出てきたので、おおむね5億年前に使われていた校舎だろうとウィークリー・ヤソガミ・ジャーナル(注)は伝えている。
 その旧校舎を根城にしているのが八十神学院修行部だった。彼ら修行部は、旧校舎が電気ガス水道通っていなくて誰も近づかない事をいい事に、不法占拠しているのである。まあ、学院当局も廃屋同然の旧校舎なので黙認していたが。
 そして、修行部にはもう1つ秘密があった。
 実は彼らこそは『闇の生徒会』、学園の暗部に潜み、学園支配に向けて魔手を伸ばし、策謀を企みそうな名前の組織なのである。
 その事を知るものは少ない。少なくても現在の所は。
 
・注:ガセネタとシモネタのみで構成されていると評判の校内新聞。現在、生徒会副会長のパンチラ写真に懸賞をかけて募集中。
  
 薄暗い部屋の中、4つの影があった。
「では、これより闇の生徒会定例会議を始める」
副部長の片倉が言った。学院の高等部の制服を着ていたが、顔面に乱暴にぐるぐると包帯を巻いていて、どう見ても怪しい人に見える。
「まず部長から一言」
「……(ゴリラ語、訳『バナナはどこだ?』」
「部長の挨拶が済んだところで、言わせてもらおう」
 片倉は続けた。
「『冗談じゃない! 人殺しと一緒にいられるか! 俺は部屋に戻らせてもらうぞ!』」
 突然、血相を変えてそんなことを叫びだす片倉。
「相変わらず見事な死亡フラグの立てっぷりじゃのう」
 小柄な白衣を着た少女と見紛うような顔立ちの少年、吉外ジョージが片倉に賛辞を送る。
「まあな、俺とて『デスワード使いの片倉』と言われた男だ」
「ところでどうしたんじゃその包帯は?」
「これはさっき部長のバナナをくすねて怒られたのだ」
「部長は草食動物とはいえ、人間を軽く捻り殺すくらいの筋力はあるからのう……」
「いいかげんにしろよお前ら!?」
 部屋の中にいる残る1人、金髪碧眼の女子生徒が突然叫んだ。
「いっつも会議とかゆって馬鹿話しているだけじゃねーか!? いつになったら学園征服に乗り出すんだよ!」
 片足を上げ、威嚇するような構えで片倉に迫る。
「そうは言うがな、山田」
 片倉は答える。この女子生徒は金髪碧眼のくせに山田という名らしかった。
「そういうことは部長が決めることで」
「部長ってゴリラじゃん!?」
「何をいっているんじゃこのロシア女!」
「そうだぞ! この部長の、ゴリラの瞳! ゴリラの筋肉! 背中に輝くシルバーバック!」
「……(ゴリラ語、訳『バナナはどこだ?』」
 片倉は紙巻きを取り出すと、火を付けて一服、ふうと紫煙を吐き出し、首を傾げて言った。
「……それって、ゴリラなんだろうか?」
「やっぱりゴリラじゃん!?」
「だが、部長であるのには変わり無いし」
「そこまでしてあたしの言う通りにしない気か!?」
 両手を上下に開いた攻撃的な構えになる山田。
「そーいや山田って変なポーズ取らんと喋れんのか?」
「な、なにをゆってるか判らねーな!」
 両手を交差して顔の前に掲げる防御的なポーズをして山田がいった。喋れないらしい。
「あと、学生のくせに煙草吸うなよお前!」
「闇の生徒会なのに細かいな。これは煙草ではない」
 片倉は火の付いた紙巻きを指して言う。
「これは俺がそのへんの裏山で適当に取ってきた野草で作った漢方薬だ。だから健康にいいのだ」
「適当に漢方薬作れるのかよ?」
「まあ、俺が考えた漢方薬だからな……ごぱあっ!?」
 いきなり大量の吐血をしてぶっ倒れる片倉。
「……どうやら毒草が混じってたようだ……ふっ、ここは俺に任せて先に行け。俺もすぐに後から逝くから」
「またそーやってすぐ死ぬし!」
「まあ奴はデスワード使いじゃからしょうがあるまい。まーしかしなにをするにしろ、4人じゃ足りんのう」
「……そーだな、3人と1匹じゃ足りねーな」
 
 『新規部員募集・修行部』
 今なら、もれなく闇の生徒会に入れる特典付き!
 君も修行部で修行して、学園を征服してみないか?
 修行部特製修行マシーンで、みるみるうちに特殊能力が身に付きます!
 
 それは見るからにおかしいポスターだった。宣伝文句の下にはマスコットキャラとでも言いたいのか、筋肉の力で無理矢理笑っているような笑顔をしたゴリラそっくりのボディビルダーが「修行するぞ修行するぞ修行するぞ修行するぞ修行するぞ」と連呼するイラストが描かれている。
「これを学内の主要な掲示板に張りつけた他、ウィークリー・ヤソガミ・ジャーナルに広告を載せるように手配した」
 おかしいポスターを手にした片倉が言った。
「おお、そうか、ご苦労じゃのう。しかし、もう身体はいいのか?」
「おう、死ぬかと思ったぜ」
 片倉は笑う。リットル単位で吐血したとは思えない顔だった。
「まあ、それはいつものことだからいいけどよ……」
 山田がポスターを見て疑問を口にした。
「あたしたち、こんなに目だっていいのかよ?」
 片倉とジョージはそれを聞いてやれやれだぜと肩をすくめた。
「これだから困るな山田は」
「そうじゃ、だから山田は山田なんじゃ」
「な、なんだよ!? あたしの存在を全否定か!?」
 ヒートアップする山田を尻目に、残る2人は冷静だった。正確に言うともう1人というか一匹、部長もいたがバナナを探しているだけだ。
「いいか、俺たちが目だっていいわけないだろう?」
「じゃあなんだこのポスターは?」
「手段のために目的を見失ったんじゃ」
「ちょっと待て」
「俺は手段のために目的を見失うが大好きだが?」
 片倉はどうしょうもないことを胸を張って言った。
「儂なんて手段のために目的を選ばないのが家訓じゃ」
 ジョージ頷いてそれに続く。
「……こ、こんなことであたしら学園征服なんてできんのかよ……?」
「まあ気にするな。今さえたのしければそれでいいじゃないか。それに……」
 片倉はそこで一旦言葉を切り、虚空を指差す。
「俺たちの学園征服はまだ始まったばかりだぜ!」
「いきなり最終回みたいだぞ!?」
 
 
 
【シナリオ傾向など】
対応人数 〜30名
キーワード 『悪の秘密結社』『部活動』『反逆』『不真面目』『シリアス希望』『学園征服』
推奨『属性』 【賢明】以外
 
【選択肢】
A013900【筋力】「闇の生徒会の一員に加わる」
A013901【なし】「旧校舎で○○する」
 
 
 
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