運命準備委員会 Sommerbrautは寂かに告げる
 


 
 
 
ルール解説
 
 
 
『ようこそ納得先生』
伊豆平成2号 Izuno, Hiranari The 2nd.
 
 木造でちょっとレトロだが、十分きれいな校舎。
 ある日のこと、その校舎の教室で、なにやら特設校の説明会が行われるらしい。
 八十神学院で特設校のカリキュラムを取ろうとして、どんな特設校があるのか調べている生徒や、なんとなくヒマだった者がその教室に集まっている。
 ガラリと教室の戸が開き、入って来たのは、奇妙な格好の若い女性だった。眼鏡にロングヘアー。大正時代か昭和初期の女学生を思わせる袴姿の和装なのだが、その首のあたりには、なぜか洋服の襟が見えている。ハイネックなブラウスの上から和服を着ているらしい。この時期、暑くないのだろうか?
「えー、みなさん、この『昼下がり特設校』の説明会によくいらっしゃいました」
 教壇に立ったその女性は言った。
 生徒の1人がさっそく尋ねる。
「……質問! この特設校は、いったいどういう趣旨の特設校で、本校とはどう違うのでしょうか?」
「当校では、一応、国語とか数学とかの普通の授業もありますが、それ以外に課外授業が非常に多くあるのが特色です。ここではずばり、世の中を授業します」
「世の中? つまり社会ですか?」
「いわゆる社会科とはちょっと違います。当校では生徒のみなさんに、さまざまな社会勉強をしていただくのです。ここ八十神学院は、それ自体が社会の縮図なので、その勉強には最適の場所と言えるでしょう」
 どうも今ひとつよくわからないが、一般的な授業が少なく、課外授業が多いようだ。ということは、学校としては単位をとるのが割合楽でいいかもしれない。
「ええと……たとえば、どんなことを?」
「たとえばと言っても、そうですね……たとえば、新学期の9月には……何をしましょうか。まだ決まってませんけど……9月、9月というと、どんな行事があったかしら?」
 逆に質問した生徒に話をふってくる。
「9月の行事……? ええと、防災の日とかありますよね。いざという時に備えて避難訓練とかする……」
「そうよ、それがあったわ。ボーサイの日。いざという時に備えて……それだわっ! 納得したっ!」
 突然、その女性は目を輝かせた。
「9月の課外授業のテーマは、『防塞』とします」
 黒板にチョークで『防塞』と書く。
「あの、そこは災いという字の方の防災では?」
 誤字かと思って生徒が指摘すると、彼女は言う。
「人は誰でも、いざという時に自分を守り敵を防ぐための砦、『防塞』を持っているのです。さまざまな防塞、心の防塞、来月はそれを学ぶことにしましょう」
 どうも、課外授業とやらの内容は、この人物の気分次第でいきなり決まるらしい。
「あの……ところであなたは……?」
 生徒の1人が尋ねる。
「申し遅れました。私はこの特設校の教師で、名は……」
 変則和装の女性は、また板書する。
 『糸』
 『内』
 『得』
 の三文字がチョークで書かれた。
「『いとうち・とく』と申します」
「珍しいお名前ですね」
 生徒がなにげなく言う。
「でも姓名判断では、字画が悪いんですよ。だから恋愛運に恵まれてないんです。……納得したっ。この年まで恋人がいないことに納得したっ」
「じゃあ、私にいい考えがあります」
 女子生徒の1人が前に出て、「得」の下に「。」を書き加える。
「こうすれば字画が変わって運命も変わります」
 その提案に対し、先生本人ではなく、席に座っていた1人の男子生徒がツッコミを入れた。
「モーニング娘。かよっ!」
「じゃあ……」
 さっきの女子が「。」を消して、かわりに算用数字の「2」を書く。
「今までの先生を『いとうち・とく・ワン』ってことにして、これからの先生は『いとうち・とく・ツー』でどうでしょう?」
「映画の続編かよ。痛いだろ、ペンネームに『2』とか『2号』とか入ってるのは!」
 さらにツッコむその男子。
「ほっとけ」
 と誰かが言ったが、それはそれとして、さっきの女子はムキになってさらに提案する。
「じゃあ、字画なんて日本のものだから、いっそ横書きにしちゃえば関係ないですよ」
「よ、横書き……」
 男子の方はなぜか青ざめる。
「納得したっ! 横書きにします」
 追い打ちをかけるように先生が名前を横書きで書く。
 『糸内得』
 字面を見て、生徒たちは思わずつぶやく。
「……納得……」
「納得先生?」
「『糸』と『内』をくっつけて書くなぁ!」
 さっきからうるさいあの男子が怒鳴る。
「ねえ、なんで本人でもないのに、怒ってるの?」
 不思議に思った別の生徒が尋ねる。先生が言った。
「ああ、その子は私の弟の『とう』です。この特設校の生徒として、みなさんと学ぶことになります。仲良くしてやってください」
「へえ。『とう』って、どういう字?」
「わあっ、書くな、横書きで書くなっ!」
 しかし、弟の抗議は先生の耳に入らず、彼女は黒板に彼の名前を横書きで書いてしまった。
 『糸内豆』
「知ったなぁあ! うわあああ」
 糸内先生の弟は、叫びながら廊下へと走り去った。
「……えー、当校の授業では、なぜか妙な騒動になることが往々にしてありますが……」
 弟が去っても何事もなかったかのように、納得先生、もとい、糸内得先生は言った。
「その結果、騒動に巻き込まれた者が新たな『運命』に目覚めることが多々あります。ただし、どんな『運命』かは選べません。また、『過去からの囁き』も同様に目覚めることがありますので、その点は納得の上でご参加ください」
 
 
 
【シナリオ傾向など】
対応人数 〜30名
キーワード 『パロディー』『ドタバタ』『その回のお題にまつわる珍騒動』『ブラックユーモア』『ダジャレ』『不条理』『脈絡のない展開』『毎回1話完結』『ゆえに、途中参加も問題なし』『比較的「運命」を獲得しやすい』『ただし「過去からの囁き」も得やすい』『ついでに発動もしやすい』
推奨『属性』 特になし
 
【選択肢】
A011800【賢明】「糸内先生の課外授業に出席する。」
 
 
 
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