運命準備委員会 Sommerbrautは寂かに告げる
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ルール解説
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『分かたれた翼はばたく時』
Seena シーナ
夏休みがもうすぐ終わる。
だが、蝉がうるさいほどに鳴き、うだるような暑さは、まだ夏の終わりを感じさせない。 暑さから隔離されたクーラーの利いた職員室で、数人の教師が暗い表情で顔をつき合わせている。 「あの二人は帰ってくるのですか? 気が重いですな……あと一年もないでしょう?」 「ええ、六月産まれですから、進級してすぐぐらいになると思います」 「17だったかね、二人の『囁き』が表面化するのは? まったく、その年齢を迎えれば死に至る。こんな厄介なささやきがあっていいのか?」 「仕方ありません。あの二人は特別な存在なのですから」 「しかし、ふたりにその記憶はない。本当に“彼”の転生かどうかも怪しいものです。まったく“彼”の記憶があればもっと……」 「ないものをどうこう言うのはやめなさい。“彼”がいれば、確かに状況は変わるだろう。だがわれわれは“彼”がいなくても、ここまでやってきたのだから」 「……そうですね」 女教師は、うなだれ、二枚の書類に目を落とす。 表情のない男女ふたりの写真が貼り付けてある。 愛染 朱華[あいぜん・はねず] 愛染 浅葱[あいぜん・あさぎ] ふたつの体を持つが、その魂はひとつだけ。 どうしてそんなことになったのか、そしてなぜ、17という年齢で死なねばならぬのか……それは呪いと伝えられる。 だが、その呪いから脱する方法は、誰も知らない。 「浅葱、入るわよ」 ごく普通の民家、長い髪をきつくポニーテールに結い上げ、大きなリボンで飾った少女が、部屋のドアを開けて中を覗き込む。 少女は、私立八十神学院の制服に身を包んでいる。 中では柔らかそうな髪の少年が荷造りをしていた。 彼もまた私立八十神学院の男子用の制服を着ている。 年は同じぐらい……ふたりは二卵性双生児として生まれてきたのだから、当然である。 顔はそっくりとは程遠いが、少し釣りあがった猫のような目の形はふたりともよく似ている。 「朱華、もう学校行く準備はできたのか?」 「もちろん。浅葱こそ、父さんと母さんに挨拶は済んだ?」 「当たり前だよ。……もう、帰ってこれないかもしれないしね」 浅葱は大きなスポーツバックを肩にかける。 「……浅葱。昨日話したこと、忘れたりしてないわよね」 「朱華こそ、いまさらなしにしようなんて、言い出さないよね?」 ふたりは、目をあわさない。 「そんなこと、言わないわ。もう飽き飽きなのよ。17歳まで生きて、死んで、また産まれるのを繰り返すなんて」 「ああ、もうたくさんだ。けど、僕らの中の“彼”がきっと何とかしてくれる」 「そうよ。きっと何とかしてくれる。分かたれた魂が一つの体に戻るとき、“彼”は目覚める」 「僕か朱華か、残ったほうが、“彼”になる」 「勝ったほうが、残るのよね?」 「勝負に手抜きはなしだよ」 「もちろん。それは、お互いに失礼なことだもの」 「そう。だから、真剣に勝負して、残るほうを決めよう。“彼”のために、輪楔者のために……そして、僕らのために」 「最初の勝負はどうする?」 「そうね、じゃあまず最初の勝負は、友達をたくさん作ったほう」 「そうだね、惜しまれるほうが残るのは当たり前だし」 「勝負を繰り返して、勝ったほうが残るの」 「勝った方が、“彼”になる」 「恨みっこなしよ」 「当然だよ」 ふたりは、目をあわさずに手を繋ぎ部屋を後にする。 ずっと、何度も何度も、永遠と思えるぐらい、ふたりで産まれてふたりで死んできた。 けれど、もうこれで最後にしよう。 ひとりだけ、ひとりだけ生き残れば、いいのだ。 双子同士でコロシアイ、残った方が、全ての記憶を取り戻す。 それはふたりしか知らない秘密。 けれど、もう秘密でなくなる。 もうすぐ、“彼”が目覚めるのだから。 「せっかくだから、楽しもうね。どっちが残っても悔いがないように」 「思いっきり、真剣に楽しんで勝負しよう」 朱華と浅葱は、目を合わせ、お互いに微笑みあった。 【シナリオ傾向など】 対応人数 〜60名 キーワード 『兄弟愛』『友情』『ドタバタ』『コメディ?』『ラブな展開は少なめ』『犠牲の上にある幸せ』『PCよりPLがしんどい』『リクエストどおり黒いほうがやる予定』『けど白も頑張る予定』 推奨『属性』 【魅力】【賢明】 【選択肢】 A011100【魅力】「朱華と友達になる」 A011101【魅力】「浅葱と友達になる」 A011102【なし】「その他○○する」 |
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Play By Mail Role Playing Game, From July 2006 To July 2007, Produced by ELSEWARE, Ltd.
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