初期情報 No.Z013200          担当:白石懺悔 「鷹尾学園の怪談!」 ―――――――――――――――――――――――――――  お姉ちゃんが鷹学にいる時に起こった話なんだけど、夏休みにね、女子ソフトテニス部が、やっぱりこの女子寮――正式には旧女子寮の女子合宿棟ね――で合宿してたんだって。  顧問はおばあちゃんなんだけどやる気ある先生で、日中はハードなトレーニングメニューを部員たちに課してたから、夜はみんな、すぐに眠くなったらしいんだけど、合宿なんて絶好の機会にすぐ寝ちゃったらもったいないじゃん。コイバナとかこわい話とか、先生やクラスメイトの悪口を言い合って、なんだかんだで夜更かししてたらしいのね。  で、午前一時をまわった頃、その中のひとりが、喉が渇いたって言って、一階の食堂に水を汲みに来たの。持ちこんでたペットボトルがなくなっちゃったんだね。二階にもトイレはあるけど、トイレの水飲むのってなんとなくいやで、下まで降りてきたんだって。  その時間にはもう使われてなかったんだけど、食堂では夏休みに合宿する部活がカレー作ったりはしてた。ソフテニ部も夜はカレー作って食べたから、その子も、水が出るのはわかってた。飲み終わったペットボトルに水を汲んで、みんなのいる部屋に戻ろうとすると、調理場からかさかさ音がするんだって。(「……ゴ○○○」)うん、そう思うよね。その子は、なんていうか部員の中では男前キャラだったから、「ゴ○○○いたよ〜」ってネタにするつもりで、調理場を覗き込んだんだって。  ドアの横のスイッチで食堂には電気をつけてたんだけど、調理場は必要ないと思ってたから暗いままだった。でも、非常用の誘導灯と食堂からの光で、なにがあるかくらいは判別できる感じだった。  床のあたりを観察してみると、やっぱりなにか動いてる。でもゴ○○○とかそういう大きさじゃないのね。動物でも入り込んでるのかと思ってこわくなったんだけど、それよりも、床にいるのがなんなのか気になって、じっと目をこらしたら、頭が丸くて毛がない、人間の赤ちゃんだったんだって。  その子は、驚いて身動き取れなくなっちゃったんだけど、じっと見ているうちに赤ちゃんと目が合っちゃって、これはやばいと思って大声を上げて二階まで駆け戻ったんだって。  部員の子たちは、戻ってきた子の顔色が真っ青だったことにもびっくりしたんだけど、なにより、ペットボトルの中の水が、真っ赤だったんだって……。  カレー作った時には普通の水だったって、みんな覚えてるのに。  ペットボトルはすぐに部屋の外に投げ出して、その日は、みんなで部屋の電気を消さずに、折り重なるように眠ったんだって。女子寮の外に出るには一階の食堂の前を通らなきゃいけなかったし、そこまでできる子はいなかった。  朝になって、別の部屋で寝てた顧問の先生にその出来事を話すと、ペットボトルの水は、単に、遅れてサビが出てきたんだろうってことで片付けられちゃった。でも、赤ちゃんを見た子だけ、あとで顧問の先生に呼び出されて、いろいろ話を聞かれたんだって。  顧問の先生が話してくれたことによれば、昔、女子寮が本当に女子寮として使われてた頃、部屋でひとりで子供を産んだ生徒がいたらしいよ。その子は、赤ちゃんをひとりで育てる気だったのか、それとも捨てる気だったのか、弱って泣く元気もない赤ちゃんを食堂の使われてない戸棚に隠してたんだって。  しばらくすると、異臭がするって騒ぎになって、先生たちが赤ちゃんを発見したんだけど、赤ちゃんはもう干涸らびてて、動物の死体みたいだったって。あの子が産んだんじゃないかっていう、挙動のあやしい生徒もいたみたいなんだけど、学校としては大スキャンダルじゃん。動物の死体ってことで裏山に埋められて、なにもなかったことにされちゃったんだって――。              *  うちの学校って、最終下校時刻5時半じゃん。下校の音楽が鳴るとすぐに見回りの先生が来て帰らされるし。中学生じゃないってのに、早すぎると思わない?  実はね、それって、何年も前からある、噂が原因なんだって。噂っていうのは――。  放課後の教室で、ひとつの机のまわりに4つ椅子を並べて、4人で机を囲むように座るんだって、そのまま4人だけで7時6分、つまり、6時66分を迎えると、校内放送が始まるんだって。明るい音楽が流れて、女の人の声で、「未来放送が始まります。あなたの未来をお知らせします」って言った後、聞いてた子の未来に起こることを次々と言っていく。それが、本当に当たるんだって。卒業後の進路も、将来の結婚相手も、全部わかる。だけど、未来放送は3人分しか放送されないんだって。未来を放送されなかった1人は、6日以内に、絶対に命を落とすって――。  その噂が大流行して、みんな7時過ぎまで学校に残ろうとしたんだけど、学校側は帰らせようとして、生徒を学校からひとり残らず追い出すのに時間がかかるから、下校時刻が早めの5時半に設定されてるんだって。              *  じゃあ今度は私ね。  第一校舎の踊り場の壁に、すごい大きな鏡ついてるじゃん。あれって、昇降口側の一階と二階の間の踊り場のだけ外されてるよね。  あれってね、最初はついてたんだけど、いろいろ問題があって外されたらしいの。映っちゃうんだって。いろんなモノが。  生徒が、魔の鏡だって騒ぎ始めたから、先生も問題視して、そんなわけないから見てなさいって、生徒を連れて鏡の前に行ったんだって。  その先生っていうのがね、若い女の先生で――              *  ――――どん。              * 「……きゃああっ!」  地鳴りのような低い響きが少女たちの言葉を遮った。  思い思いの姿勢で、語られる噂話に聞き入っていた少女たちは、一斉に手近な布団に潜り込み、自然にひとつところに固まった。  息を殺して身を寄せ合う。夜半過ぎから降り出した雨が、勢いを増して、女子合宿棟の屋根や壁を叩いていた。 「……なに?」 「雷?」 「近かったかも」 「光った?」 「一緒に光った。近い」 「電気、つく?」 「――つかない」 「えっ、やだ、こわい」 「今までだってつけてなかったじゃん、電気」 「つかなくなったらこわいよ」 「どうしよう」 「どうしようもなくない?」 「朝までこのまま?」 「寝ればいーじゃん。明日早いよ」 「そだけど」 「…………」 「…………」 「…………」 「…………」 「なんか聞こえない?」 「やだ、やめてよ」 「訊いてるの。聞こえない?」 「なにが」 「ほんとやめてってば」 「なにこれ」 「これさぁ……」 「やだぁ、もう」 「これさぁ」 「――赤ちゃんの泣き声だよね」 「…………」 「…………」 「…………」 「…………」 「…………」 「もうやだぁ……帰る……」 「…………」 「…………」 「…………」 「原口[はらぐち]」 「…………」 「ねえ、あんたの話したソフテニ部の話ってさ」 「…………」 「D組の速水[はやみ]の話でしょ」 「……え、違うよ? 私お姉ちゃんに聞いて……」 「あんたのお姉ちゃんって、20年卒業でしょ」 「……そうだけど」 「女バレのうちの姉と同じ学年」 「…………」 「姉のいた三年間、夏合宿は、どこの部活もやってないよ。学校的に学業優先の雰囲気を育てて行こうって方針になって、合宿中止になった。あんたのお姉ちゃん、文化部?」 「……そう」 「じゃあ知らないよね」 「……そうだよ。今年の話だよ。速水だってなんでわかったの?」 「なんで嘘ついたの?」 「…………」 「なんで?」 「……いやじゃん。自分たちの泊まってる建物で、ほんの一週間前に事件があったなんて。でも、私だけ知ってるのも怖くて、耐えられなくてみんなに話したの。お姉ちゃんから聞いた話にして」 「原口ぃ」 「なんで益子[ましこ]が泣きそうなの」 「あ、あたしも……ちょっと嘘ついてた」 「あんたも?」 「ていうか、言わなかった。あのね、未来放送、試しちゃったの」 「……あんたが?」 「ん……」 「未来、放送されたの? されなかったの?」 「わかんない。クラスの子と一緒にやったんだけど、本当に放送は聞こえてきたんだけど、なんかブツブツ言ってて」 「うん」 「天井にクラスの子が耳近づけて聞いてみたら、椅子から落ちちゃって」 「怪我したの?」 「怪我はちょっと。でも……」 「…………」 「なんかね、未来放送、ずっと低い声で、死ね死ね死ね死ね死ね死ねって」 「…………」 「やだぁ……なにそれ……」 「未来を教えてくれるっていうのは、嘘なの?」 「わかんない。それが、あたしの未来なんかも……」 「…………」 「…………」 「…………」 「まだ聞こえるね」 「やめてってば」 「……うん」 「なんかすげえ寒い」 「私も」 「…………」 「…………」 「…………」 「……原口」 「泣いてない」 「泣かないで、大丈夫だから」 「……ねえ、やっぱり今年の夏は、おかしいよ。へんなことが多すぎる」 「相談してみようよ」 「誰に?」 「先生、は無理」 「ケーサツじゃない?」 「相談した人いるらしいよ」 「うそっ、それで?」 「このあたりの霊子濃度レベルでそんな《雑霊》被害が起きるわけないって」 「えっ、それって違くない?」 「だよねー。実際起こってるわけだし、《雑霊》被害」 「――いるじゃん」 「なにが?」 「なんかそーゆーこと、分かってくれそうな、身近な人、いるじゃん」 「…………」 「相談してみよう。なんか、このままじゃだめだ」 「……うん」 ――――――――――――――――――――――――――― ■マスターより  皆様はじめまして! 白石懺悔と申します。  マスター経験はほんのちょっとだけありますが、ほとんど初心者です。お手柔らかにお願いできればと思います。 ■シナリオの目安 危険度:★★ 対応人数:★★★ キーワード:「学校の怪談」「学園もの」「退魔もの?」「(途中で学園ものじゃなくっても怒らないでね!)」「みんなでわいわい」「判定:緩め」 ■関連行動選択肢 A023200 「鷹尾学園の怪異について調べる」 A023201 「鷹尾学園の怪異について特に女子寮を調べる」 ※備考:Z013201もご参照ください ――――――――――――――――――――――――――― 個人としてゲームを楽しむための交流の範囲を越えない場合に限り、この「初期情報」の複製、サイトへの転載を許可します。著作権等の扱いについては、公式サイト(http://else-mailgame.com/gddd/)を参照ください。 copyright 2012-2013 ELSEWARE, Ltd. ―――――――――――――――――――――――――――