初期情報 No.Z002100         担当:竹本みかん 「企画会議in九州」 ―――――――――――――――――――――――――――  ――福岡県福岡市。 「…………」  とあるファミレスの片隅で、ゴシックロリータの格好をしたローティーンと落ち着いた雰囲気漂う黒髪眼鏡美女が、それぞれ腕組みをしながら沈黙していた。そして―― 「あっ、すみませーん!  コーヒーのおかわりくださぁーい!」 「何度目だよ? そんなに飲むのなら、ドリンクバーのある店にすれば良かったのに……」 「だって、取りに行くの面倒くさいしぃー。  いもちゃん取りに行ってくれないしぃー?」 「やなこった!  誰がヨシコのパシリなんてするもんか!」 「でしょー?」 「ドヤ顔すんなや!」 「ンもぅ、いもちゃんはー。  そんな格好して、汚い言葉を使っちゃダーメ」 「好きでこんな格好してんじゃねぇーよ!  ったく……もう、いい加減にちゃんと会議しようぜ。食うもん食ったわけだしさぁー?」 「そうね。経費使って食事して、何もしてないとかサイアクだしぃー」      ◆     ◆     ◆  いもちゃんと呼ばれた口の悪いゴスロリ美少女の名は小野妹子[おのの・いもこ]。そして、ヨシコと呼ばれた黒髪美女の名は、ヨシコ・クリスティーン[−・−]こと、紫式部[むらさきしきぶ]である。  2人は、フリーのプロデューサー兼ディレクター&放送作家として、福岡の放送局であるテレビ番組を立ち上げようとしていた。      ◆     ◆     ◆ 「――ということで、枠はゲットできたわけだけど……どうするぅ?」 「どうするぅー、って創るんだよ、番組を。 『祭主向上委員会』って名前の番組を」 「いやー、あちこちで断られてたから、枠が取れた時点でものすごい達成感がー」 「いやいや、俺たちの戦いはこれからだよ!  まだ何も始まっちゃないよ!」 「だって、どんだけテレビ局回ったと思ってんの? 関東から関西まで全滅だったんだしさー」 「たしかに、アレは辛い日々だった……」 「ウチ的には、なんだかんだで全国うまい物巡りができて良かったけど?」 「そりゃ、交渉するのはボクだったしな!」 「その分、企画書とか書いてあげてたから、イーブンじゃない? ウィンウィンの関係じゃない?」 「この、ウィンウィン言いたいだけが!  とりあえず、パイロット版だ。パイロット版」 「そうねぇ……。  今回はわかりやすーくいっときましょうか?」 「とりあえず《祭主》の本分ってやつを見て貰わないといけないからなぁ。  ……やっぱ、ここは《雑霊》退治かぁー?」 「いろいろやりたいことはあるけどぉ、基本は押さえとかないとねぇー」 「で、パイロット版の《祀徒》はどうする?」 「地元のタレントの中で、《祀徒》の才能があるのをピックアップして使うしかないかなぁー」 「やっぱ、そうなるかー。できればボクたちのどっちかと契約してる《祀徒》がいいんだけどなぁ」 「それはしかたないよぉー。  ウチら、こっち来て間もないしぃー」 「しゃーないな。その線でやってみよう。  場所は前々から目星を付けてた廃病院で」 「例の院長が妻の愛人に射殺された、あの……ね」 「そうそう。そのあと、院長は囲ってた愛人と駆け落ちして行方知れずってことにされてた……」 「まったく、W不倫の末の殺害とか……この時代も愚かしくてエキサイティングな連中ばっかりで、ある意味感心するわねぇ……」 「その辺はお互いにきっちり話し合えば、殺さなくてもよかった気がするけどね。そのおかげで、院長の怨念がたっぷり籠もった病院は、閉鎖されたあと《雑霊》の温床になっちゃったというね」 「まぁ、そういう場所が多数あるおかげでウチらのお仕事もやりやすくなるわけだから、これはこれでありがたいって言えなくもないわねぇー」 「んじゃ、その方向でロケハン組んでやってみるとしようかー」 「地元タレントさんは、なるべくご陽気な人がいいわね。目的はあくまで《祭主》のイメージアップだから、辛気くさいタイプは番組のカラーに合わないし」 「《祀徒》じゃなくていいのなら、いくらでもいるんだろうけどなぁー」      ◆     ◆     ◆  ――1週間後。  妹子とヨシコは、行きつけになりつつあるファミレスのテーブルにつっ伏していた。 「まさか、失敗するとは……」 「しょうがないじゃない……。  あそこの《雑霊》を相手にするのに、《祀徒》の実力が足りてなかったんだから」 「よもや、タレントのSAN値が下がり切るとは」 「正気を失うぐらいの表現に留めときましょーよ」 「でもなあ、たかだか廃病院に住み着いてる程度の《雑霊》にも敵わないんじゃ話にならないよ……」 「どうしてあれだけ通らなかった番組企画がこの九州で通ったのか、わかったような気がしてきたわー」  実のところ、九州はなぜか他の場所より《祭主》のイメージが悪い。そんな地域であるだけに、本来ならば「祭主向上委員会」などという企画は、通りにくかったはずなのだ。 「ああ、そうだな。この辺り、余所よりも《雑霊》の質が悪いんだ。だから、ボクらが立てた基本的に《雑霊》退治をして回る企画は渡りに船だったわけだ」 「まあ、その辺はウチらの目的と合致してるから、その辺はウィンウィンの関係ってことでいいんだけれどぉー……問題は《祀徒》の手配だわよねぇー」 「ボクらが望む程度の《祀徒》はいないらしいから、質じゃ期待出来ないのなら、数で補うしかない」 「ううーん……あ、お姉さんコーヒーおかわり」 「うむーん……他のもんも頼めよ。  せっかく経費で落ちるんだからさぁ……。  ということで、ボクは抹茶のロールケーキを」 「あ、それじゃあウチも……。  チーズハンバーグセットも一緒に注文お願いね」 「だからって、がっつり食うなよ!」 「だって、お肉とか美味しいじゃない。  でもって、ハンバーグとかすごくない?  チーズも食べたことなかったから、初めて食べた時なんてもう天にも昇るような気分だったわよ」 「それ、ボクら《祭主》が口にすると微妙な表現になっちゃうから……」 「それはともかくとして……新しい《祀徒》を集めるためにオーディションとかやっちゃう?」 「ただ、《祀徒》集めは必要だけど、あまり悠長にやってる時間はないね」 「じゃあ、現地で撮りながら選考するとかは?」 「オーディションがてら《雑霊》と戦わせるって?  悪くはないアイデアだな……もし、またしくじってもそれなりの構成にはなりそうだから」 「ひどかったもんねえ……あの、タレントさん……チコ[−]ちゃんの怖がりようときたら……」 「正直、引いた……まさか、あんなことになっちゃったなんて……」 「あれ、下手すりゃ多分一生もんよ。  チコちゃんタレントとしても終わりかも……」 「悪いことしちゃったな……」 「本当、本当……チーズハンバーグまだかな……」 「ヨシコ……お前、あんまり反省してないだろ?」 「だって、チーズハンバーグの魅力の前では些細なことだもの……」 「やれやれ……それじゃあ、地元の猟幽会に緊急募集をかけてみるとしようか」 「――わーい、きたきたぁー!  ウチのチーズハンバーグだぁー!!」 ――――――――――――――――――――――――――― ■マスターより ・当シナリオは、ローカル番組『祭主向上委員会』に出演者やスタッフとして関わることになります。 ・現状は、福岡市某所の廃病院に巣くっている《雑霊》を退治しつつ、番組パイロット版の撮影をするのが目的です。 ・《雑霊》は主に病院中庭中央に位置する噴水から出現していますが、病棟内でも確認されています。 ■シナリオの目安 危険度:★〜★★★ 対応人数:制限無し キーワード:「ローカル番組」「《雑霊》退治」「九州」「×」 ■関連選択肢 A012100 「とあるローカル番組のパイロット版撮影に関わってみる」 備考:年齢、性別、組織等、参加にあたっての制限はありません。 ――――――――――――――――――――――――――― 個人としてゲームを楽しむための交流の範囲を越えない場合に限り、この「初期情報」の複製、サイトへの転載を許可します。著作権等の扱いについては、公式サイト(http://else-mailgame.com/gddd/)を参照ください。 copyright 2012-2013 ELSEWARE, Ltd. ―――――――――――――――――――――――――――