初期情報 No.Z001901         担当:獨伝把奥郎 「霊子エネルギー研究所の日常」 ―――――――――――――――――――――――――――  ある日の午後。  霊子エネルギー研究所、G県研究所所内の廊下。 「エウレーカ!」  とか叫ぶ全裸の少女が走っていた。  歳の頃は10歳くらい。風呂上がりなのかずぶ濡れで、足跡が点々と廊下に残っている。  彼女こそがこの研究所顧問を勤める《祭主》アルキメデス[−]である。  古代史において最も偉大な数学者にして発明家の1人に数えられるアルキメデスが、なぜよりにもよって少女体化してるんだという疑問もあるだろうが《祭主》の女体化率はけっこう高いからと納得して頂きたい。  廊下を疾走し続けるアルキメデスの行く先には、午後を過ぎてからようやく出勤してきた、葛原籤雄[くずはら・くじお]所長の姿があった。  ずぶ濡れ全裸で廊下を全力疾走したことがある方なら誰もが経験あるだろう(私は無いが)。そのような状況で行く手に誰かがいたとしても、濡れた裸足では滑ってしまって急には止まれない。  だがそこは天下の大学者アルキメデスである。物理学的に正しい運動エネルギーの相殺方法を的確に実行する。 「エウレーカ! 新発見じゃー!」  なんか叫びつつ葛原所長にドロップキック。鳩尾にアルキメデスの足が突き刺さる。 「うげえっ!?」  口から酸っぱい液体を撒き散らしながら倒れる葛原所長。 「そこの若いの! ワシの新発見を聞くのじゃ!」  アルキメデスはドロップキックから着地するやいなや、口からえれえれと液体を垂れ流している葛原所長の襟首を掴んで持ち上げて言う。 「いや……俺……昨日というか今朝まで飲んでて二日酔いなんで……できれば後で……」  息も絶え絶えでかなり駄目な事実を告白する葛原所長だったが。 「そんなことは知らーん! ワシの新発見を聞くのじゃー!」  アルキメデスは全裸なのになぜか持っていた油性マジックで葛原所長の顔に何か数式を書き始める。どこにでも数式や図形を落書きするのが彼女の癖だった。 「つまりこのようになるわけじゃ!」 「いや……俺の顔に書かれても俺に見えるわけがないような……」 「ええいつまりじゃな、底辺×高さ÷2で三角形の面積が求められるのじゃ! どうじゃこのまったく新しい新発見!」 「……小学生でも知ってる」  《祭主》アルキメデス。  外見は少女だが中身はちょっとボケ老人だった。            ◇  G県研究所所長室。 「まったくなんで俺がこんな目に……」  ウコン茶をずりずり啜りながら鳩尾を押さえた葛原所長がぼやく。油性マジックだったので顔の落書きも消えていない。 「まあ気にするな。ワシの郷土にも気にするなという諺もある」  なぜかアルキメデスも所長室にいた。 「なんでここにいるかというか、なんでまだ全裸なんだとかそういう事を言いてえ。あと絶対シラクサにそんな諺は無いし」 「そういえばお前の名前はなんと言ったかのう? えーと、クズ……そうじゃ、人間のクズ?」 「なんかヒドイ暴言を吐かれてるし! 俺はもう泣いていいよね?」  その時、所長室のドアがノックされた。 『吉外だ』 「おおう、ようやく来たか副所長」  吉外猫[よしがい・ねこ]。  霊子エネルギー研究所、G県研究所の副所長である。所長の葛原は政府から派遣されてきた役人なので、この研究所における研究者の事実上のトップが彼女だった。 「早い所、このボケ少女を引き取ってくれ」  猫副所長はアルキメデスと妙に仲が良かった。その理由はすぐに判ることになる。 「では入るぞ」  ドアを開けて入ってきたのは20代半ばの女性。研究者らしく化粧っ気は無く、服装も白衣を着ているだけだ。  そう、白衣だけである。  その下には何も着ていなかった。 「服を着ろお前ら!?」 「いや、研究者たるもの、白衣さえ着ていれば充分だろう?」 「そんな珍説聞いたことないよ!? 真昼間から陰毛さらしてうろつくな!」 「判った、判った、つまり剃ればいいんだな」 「良くねーよ!?」 「あと私としては陰毛というより恥毛という言葉の響きのほうが好きだ」 「そんなこと聞いてねえ!?」  そう、猫副所長とアルキメデスが仲が良い理由。  服装(?)の趣味が合うからだった。 「だいたいだな、近いうちに募集していた新規の警備隊員と研究者が来るんだぞ」  葛原所長はため息をついて言う。 「その新規のメンバーたちの前にいきなり裸白衣で出るつもりか? みんな引くだろうが!」 「まあ、そんな先の事は、その時になって考えれば良いだろう。何も今パンツを穿く必要はない」 「いやいつでもパンツは穿け!」 「むしろ所長が脱ぐべきではないか? 私もアルキメデス師も脱いでいるのだし多数決だ」 「なんだその数の暴力は!?」 「大丈夫だ。私は所長がチ○○コを晒していてもさほど気にはしない。私の郷土に気にするなという諺もある」 「若い女がチ○ポ○とか言うな!? あとその諺は世界的にメジャーなのか!?」  と、2人が伏字の意味が微妙に無いような言い争いをしていると。 「おお、そうじゃった!」  アルキメデスが思いついたように叫ぶ。 「ワシは風呂に入っている途中じゃった!」 「うん知ってる」  今まで忘れていたのかこのボケ少女といった顔をして葛原所長が言う。 「途中だったんじゃし、風呂に戻らなければ。こんなこともあろうかと全裸でいて良かったわい」 「その『こんなこともあろうかと』は明らかに嘘だろう……」 「お前も風呂くらい入ったほうがいいぞ?」 「いや普通に毎晩入っているが自宅で」 「本当か? お前からは何やら洗ってない所長のニオイがするんじゃが」 「洗ってない所長のニオイってどんなのだ!? なにか? 俺はイジメられてるのか? 職場内イジメなのか? くそっ、俺はもう今日は帰ってやる!」 「さっき出勤してきたばかりだろう所長……」  こうして、平均的なG県研究所の一日は終った。 ――――――――――――――――――――――――――― ■マスターより  獨伝把です。  当シナリオの日常風景はこんな感じです。  参考になれば幸いです。  Z001900も御参照ください。  設定上の補足ですが、霊子エネルギー研究所は日本各地にあり、G県研究所はその中の一つ、ということになります。G県研究所は復興モデル都市などの関係でやや特殊な地位にありますが、他の研究所に対して上位にあるわけではありません。 ■シナリオの目安 危険度:★★★ 対応人数:★★★ キーワード:「ギャグ」「組織」「科学」「ここではきものをぬいでください」 ■関連選択肢 A011900 「G県研究所警備隊に志願する」 A011901 「G県研究所研究員に志願する」 A011902 「その他、G県研究所で○○する」 ※備考:警備隊、研究員以外で何かをしようとする場合の選択肢です。 ――――――――――――――――――――――――――― 個人としてゲームを楽しむための交流の範囲を越えない場合に限り、この「初期情報」の複製、サイトへの転載を許可します。著作権等の扱いについては、公式サイト(http://else-mailgame.com/gddd/)を参照ください。 copyright 2012-2013 ELSEWARE, Ltd. ―――――――――――――――――――――――――――