初期情報 No.Z001900         担当:獨伝把奥郎 「人跡未踏の地に近未来都市を見た!」 ―――――――――――――――――――――――――――  G県。  そう、G県である。  ちょっと気の弱い女性なら、県名を聞いただけで卒倒してしまうことも珍しくないというG県だ。  首都近郊にありながら、大部分が鬱蒼とした密林に包まれ、その中には弓と槍を持った原住民とカラシニコフを肩に担いだ武装ゲリラがうろつくという土地である。ネットで県名を検索したらそういう画像が出てくるんだからこの事実に間違いはない。ないったらない。  大霊災以前からそのような土地柄だったG県は、今現在どうなってしまっているのか?  僅かにあった文明の光まで失われ、老人が歩けば種籾を奪われる弱肉強食の冒険大陸になってしまったのか?  否、否である。  科学の力は、この困難な時代においても、いや、困難な時代であるからこそ、それは人々に希望の光だった。  それを象徴する街がこの地にある。            ◇  大霊災復興モデル都市(仮)。  それは霊子エネルギー研究所を中心とした近未来都市、になる予定の街だ。(仮)というのは正式名称が決まってないからである。というのも「新東京○○市とかがいいんじゃね?」「いやいやここ東京じゃないし、どこぞのネズミランドじゃないんだから」「そうだG県のくせに生意気だぞ」「じゃあ新東京蒟蒻市で」「いやまて、だから東京を削れよ東京を」「そうだG県のくせに生意気だぞ」「だいたい蒟蒻ってなんだ名産物がそれしかないと思っているのか他に何かあるのか言われるととっさには思いつかんが」などという議論の迷走が背景にある。  なお、名称は絶賛募集中です。  話が逸れた。  『無限螺旋機関』。  霊子エネルギー研究所が実用化に成功した、画期的な新エネルギー機関の名前だ。  大霊災後、その辺に溢れすぎて困ってる霊力を源に電気ガス水等などが無尽蔵に取り出せるという、冗談のような装置である。  これによって大霊災の被害の大きい地域のインフラを復旧させる、そのために作られたのが大霊災復興モデル都市だった。  真昼間から《雑霊》が出没する警戒区域の中にこの都市はあったが、街中に限れば状況は平穏が保たれている。完全に供給が止まっていた電気ガス水道も研究所を中心に整備し直され、道路住宅などの復旧も進み、序々に住民も集まりつつあった。  この街の現状はそんなところだ。  だが、問題はあった。いろいろと。            ◇  葛原籤雄[くずはら・くじお]。  霊子エネルギー研究所、G県研究所所長である。  研究所の所長と言っても彼自身は研究者ではなく復興モデル都市計画の責任者として、日本政府から派遣されてきた役人だった。三十路そこそこの彼がこんな危険地域に飛ばされるというのは、たぶん大きなヘマをして左遷させられたのではないか、というのが研究所員たちの一致した見解である。 「ああ、面倒くさいなあ」  所長室で書類の山を前に葛原は呟く。 「《雑霊》退治とかまでウチの仕事なのかよ……」  都市内は平穏だとはいえ、逆を言えば都市外へ一歩でも出れば平穏ではないということだ。《雑霊》や原住民や武装ゲリラに遭遇する可能性も高い。  そのために研究所には警備隊が一応あるが、今の所、絶望的なまでの人員不足だった。ついでに装備も不足している。 「警備隊、新規の人員を募集しないとダメか。ついでにそのうちの誰かを責任者にでっち上げて、俺がラクをするというのがベストだが……」  葛原は傍から見て判るほど、かなり駄目な男だった。何しろやる気がない。まあ、もしもやる気があっても実行できる能力があるかどうかも怪しいが。  そもそも、G県研究所はそんなに期待されていた研究機関ではなかった。だが、副所長を務める人物が周囲の予想をはるかに上回るエネルギー機関を開発してしまい、なし崩し的にこの復興モデル都市計画も当初の予定より大規模になってしまっていたのだ。  『電気ガス水道代がタダ同然で安全』という誘いによって住民も急速に増えつつある。  だが、その中心となるこの研究所の人員はまるで足りてない。  限界が露呈するまで対策しようとしない葛原も葛原だが……。  その時、所長室の机の上に置いてある、妙に古いデザインの黒電話が鳴った。 「むっ」  葛原はシリアスな顔をして受話器を取ると、シリアスな顔をしたまま言う。 「ハァハァ……お譲ちゃん、今どんなパンツ履いているの……」 『いや、履いてないが』  受話器からは、動じた様子もない若い女の声が聞こえてきた。 「なんだ、吉外[よしがい]副所長か。セクハラして損した」 『電話に出るなりセクハラする悪癖はどうにかしたほうがいいと思うが……』 「まあそれは今後の課題として前向きな方向で善処したいということで」 『それはそうと、警備隊の装備の事で話があったのだが』 「ああ、それはちょうどいい。なんかそっちのほうで科学の力で《雑霊》をどうにかする装備を作ってくれ」 『無茶を言うな。私をなんでも発明できるマッドサイエンティストだとでも思っているのか』 「うん思ってる」 『……こちらも人手が足りないのだ。研究員の人員を増やさないとどうにもならない』 「そこをなんとか任せたい。そうすれば俺がラクになるし」 『無限螺旋機関を安定的な運転をするので、今いる研究員は手いっぱいだ。新しく人が来るのなら技術の提供くらいはするが。たしか人事権は所長の管轄だろう』 「つまり俺に働いて人を集めろというのか。なんて残酷なことを思いつくんだ。俺は働かないで所長としての給料を貰いたいだけだというのに」  そこで電話が切れた。 「むう、こうなったら仕方ないな……」  とてつもなく嫌な顔をして葛原が言う。 「嫌だが少しは働くか……えーっと、人員募集ってどうやるんだっけか……?」 ――――――――――――――――――――――――――― ■マスターより  どうも、お久しぶりです。あるいは、はじめまして、獨伝把奥郎です。  霊子エネルギー研究所のG県研究所では新規の警備隊員と研究員を募集しております。あとついでに復興モデル都市名も募集中です。  笑いが絶えない楽しい職場です。たぶんきっと。  警備隊員は都市周辺での戦闘が予想されます。  研究員は、当面は警備隊のための装備を開発することになります。「ボクの考えた最強の発明」とかを書いて送るといいかもしれません。  あと、これは補足ですが、私の担当ではボケキャラが多く、突っ込みキャラが不足する傾向があります。なので、そういったキャラクターを狙って作るのも手かもしれません。 ■シナリオの目安 危険度:★★★ 対応人数:★★★ キーワード:「ギャグ」「組織」「科学」「ここではきものをぬいでください」 ■関連行動選択肢 A011900 「G県研究所警備隊に志願する」 A011901 「G県研究所研究員に志願する」 A011902 「その他、G県研究所で○○する」 ※備考:警備隊、研究員以外で何かをしようとする場合の選択肢です。 ――――――――――――――――――――――――――― 個人としてゲームを楽しむための交流の範囲を越えない場合に限り、この「初期情報」の複製、サイトへの転載を許可します。著作権等の扱いについては、公式サイト(http://else-mailgame.com/gddd/)を参照ください。 copyright 2012-2013 ELSEWARE, Ltd. ―――――――――――――――――――――――――――