GDDD外伝(仮称) No.G993601         担当:上岡統 「真ラスボス」 ―――――――――――――――――――――――――  フランツ・シューベルト[−・−]は悩んでいた。 「すみません、このリアクションタイトルは、どういうことなのでしょうか」 「一昔前のラノベで流行った楽屋オチだな。この世界のどこかで誰かが泣いているようだが」  地の文を書いている誰かが、己の年齢を推定されるのではないかと戦々恐々としているのである。 「いえ……あの、そちらはあまり気にいたしませんので、改めてこのタイトルについて……」  しかし、シューベルトはそこでまた悩む。果たしてこのタイトルについて論じて良いのだろうか。そもそも、自分を一時契約で呼び出したこの《祀徒》の青年は、かなりの問題人物だ。 『あのさ、お前の《霊験》の野バラってあるじゃん、あれで女の子とか縛ってSMとか出来るの? そこは重要だからまずはっきりさせようか』  これが自分に発した第一声である彼と、何であれ議論するのは、ひどく時間の無駄になる気がするが、しかし《祭主》たる自分が『時間の無駄』を気にしてどうなるのだとか(もう一度死んでるし)、それに他人(?)の《霊験》で企むことが……怖いよ! なんかもうこいつ怖い! あんまり関わりたくない! 「で、お前はリアクションタイトルの何が気にくわないんだよ。お前は『魔王』で有名なシューベルトで、外見まで魔王っぽくって、本契約のみで使える《霊験》まで魔王っぽいし、でも俺は本契約してる《祭主》がいるから、野バラの方を活用しようと思ったんだけど」 「すみません、それ以上『魔王』呼ばわりされると、穢れが溜まって《災主》になりそうなのですけれども」 「お前が《災主》になったらいよいよもって魔王だろ」  だめだ。どうしよう。口では全然勝てそうにない。泣きたい。しかし、涙を見せたが最後、もっと「お前は魔王だ」と煽ってくるよね、こういう性格の人。そういうことは察知してしまうシューベルトであった。 「人に与える第一印象って、案外さ、コントロールきかないんだよね、俺もナンパの成功率あげるファッションとか散々試したのに、だいたい逃げられるんだよね、だからさ、第一印象を変えるより、まずは第一印象通りの自分になろうぜ。それが本当の自分なんだよ、きっと。自分探しとか無駄なんだよ」  いろいろ御託を並べて煙に巻こうとしているが、 「すみません、それはつまり、私は公安第霊課から《災主》と間違えられる容姿なので、もう《災主》になってしまえば楽ですよと、そうおっしゃっているように聞こえてならないのですが」 「それは《祀徒》の俺から言ったらまずいかなぁと思って、ちょっと言葉を工夫したんだけど」 「まるまる全部伝わってしまっているのですが」 「でもね、まだ足らないと思う」  何が足らないと言うのだ。 「つまるところ、その口調どうにかしろよ。えーっとね、ちょっと待って、3029とか……」 「その数字は何なのですか」 「いや、一人称の指定を『我輩』に変えようかと」 「足らないって魔王っぽさですか! 止めてください!」 「3036だとさすがにイメージ崩れるぞ?」  確かに『オラ』とか言い出したらイメージは崩れるだろう。だがこれで言いくるめられたら一人称を『我輩』にされてしまう。 「……『私』の方が、魔王っぽいと思いません?」  ついに話題に乗っている振りをして下手に出てしまうシューベルトであった。 「なるほどね、その辺はスタンダードに行くか」 「でしょう?」 「じゃあ二人称は3131ね」 「止めんか貴様!」  ついにシューベルトは怒鳴った。 「そう、そんな感じでよろしく。語尾リスト、今のはどれだ?」  まずい。このままではまずい。シューベルトは苦悶した。我が子を魔王に取られまいとする父親に負けず劣らず苦悩した。  そして咳払いの後、一時契約とはいえ、彼の《祀徒》たる青年に、おごそかに語りかける。 「……取り乱しまして、失礼なことを申し上げました。それは、お詫び申し上げましょう。ただ、私には疑問があります。魔王がゲームのラスボスというのは、もう飽きられていて、私が魔王であっても、皆さんのご期待には添えないのではないかと」  そのシューベルトの言葉に、《祀徒》の表情が凍り付く。お気楽そのものであったのが一転して、深刻な表情で黙りこくる。  しばしの沈黙。  シューベルトは説得に成功したかと胸をなで下ろしたその瞬間。 「魔王の上には『魔神』というものがあってだな」 「止めんか貴様!」 ――――――――――――――――――――――――― ■マスターより ▼こんにちは、上岡統です。 ▼ごめんなさい。 ▼では今回はこの辺で。またお目に掛かる機会があれば幸いです。 ―――――――――――――――――――――――――  ここに書かれている内容・情報は、「GDDD外伝」内限定のものであり、公式設定と食い違う場合があります。ここに書かれた内容を元にしたアクションは、原則採用されません。  このリアクションの複製および、個人サイトやブログ等での無断転載・転用、無断配布等は固く禁止しております。 ※個人としてゲームを楽しむための交流ためであっても例外ではありません。 ―――――――――――――――――――――――――