GDDD外伝(仮称) No.G993300        担当:高橋一希 「優しさが足りない」 ――――――――――――――――――――――――― ! caution !  このお話には大変なキャラ崩壊が含まれております。実際のシナリオとは関係は微塵もございませんのでご注意ください。  それではお話のはじまり、はじまり……。  つくば、とある薄暗い建造物の中。 「……なんで悪役の居城って薄暗いんだろうねぇ……」  《災主》ヘンリー八世[−はっせい]はこちらという名のどちらかを向いてそう宣った。  つーか悪役だという自覚があったのかと問いたい。問い詰めたい。小一時間問い詰めたい。寧ろ自覚があるなら悪役止めろと。  さておき彼はそんな地の文のツッコミはスルーしてこう述べる。 「もうちょっとこう、明るい場所でもいいと思わないかい? 華やかだったりとかさ」  ぶっちゃけどこらへんに向けたアピールなのかはちょっとわからない。が、それはおいといて。 「……陛下」  彼の傍に控えているのは二十代後半の美人女性が控えめに声をかける。ロングの黒髪と泣きぼくろが印象的な彼女は、名を海原春菜[うなばら・はるな]と言う。 「ああ……ええと、御前から研究費が振り込まれてないって話だっけ」 「そうです」  彼らは色々アレでナニな研究を行い、その結果を御前に提出したりなんかして結構な額のお金を貰っている。  が、何があったか今回それが振り込まれていないというわけだ。  死活問題、という程差し迫ってはいないものの、これはゆゆしき事態である。  で、ヘンリー八世はイラっとしていた。  イラっと来ると彼には若干ながら口調が荒れる癖があった。  因みに普段はユルめのロクでもない感じの喋り方である。具体的な喋り方については……まあ、適宜ソレっぽいリアクションを探して頂きたい。誰かは持ってるはずだ。多分。  話を元に戻そう。 「全くしょうがねぇおじいちゃんだなぁ……ボケたか? 仕方無い。俺から連絡をいれよう」  ひとりごちつつヘンリーは懐からシャンパンゴールドの携帯電話を取り出す。今時ちょっと珍しい気もするがガラケーである。  プッシュしたのは御前直通の番号。しばらくのコール音の後、誰かが電話に出た。 「あー、もしもし? おじいちゃん? オレオレ、俺だけど。研究費用が振り込まれてなくてさー……」  ちょっとだけ電話の向こうで何かごそごそと音がし、言い合いのような声も聞こえる。  そして何かが受話器に近づき……。 「あぁ? あんだテメェは? オレオレ詐欺かァ?」  ……大変ガラの悪い声がした。  オレオレ詐欺。  よりによってオレオレ詐欺呼ばわり。  ヘンリーは即座に眉間を指で揉んだ。  何が悲しくて元英国国王がオレオレ詐欺呼ばわりされなければならないのか。  相手の声には聞き覚えがあった。顔は思い出したくもないが、御前子飼いの犬《災主》エルナン・コルテス[−・−]だろう。多分。 「あー、おじいちゃんの所のわんわんかぁ。君に用は無いからさ、おじいちゃんに代わってよ」  更なるイラっと感を抑えつつヘンリーはそう続ける。なにせコルテス相手で変に話がこじれようものなら大変面倒臭い事になる。あの半ば恫喝みたいな声で長々と下世話な単語を交えた罵倒なんぞされた日にはと考えただけでも頭が痛くなる。間違い無くしばらくは半分が優しさで出来ている頭痛薬のお世話になる事だろう。  ……いや《災主》だから薬とか意味ないけど、多分優しさが足りないのだ。優しさの補給ならあの薬も意味があるはず!  悩めるヘンリーへとコルテスが答える。  その言葉はあまりに意外なものだった。 「うっせーな。オレオレ詐欺からジジィを守るのは地域のミナサマって言うだろうがよ!」  ……何この綺麗なコルテス。 「ちょ、ちょっと待ってコルテス君! 君《災主》だよね? 今僕君の言葉で鼻から霊力噴出しそうになったんだけど!? 何か変な物でも食べた!?」 「《災主》だから食っても関係ねぇよ」  憮然とした態度でコルテスが答える。 「じゃあ……《祭主》平賀源内[ひらが・げんない]から変な薬でも盛られた……?」 「だから《災主》だから関係ねぇっつってんだろ!」  色々酷い話である。つーか人様に変な薬を盛るような源内はもう既に《災主》だろう。多分。 「それとも《災主》のわりに意外良いやつなのか……? もうオレオレ詐欺防止ポスターにでもしてもらえよ! 誰得って気もするけどさ!」 「よせよ、照れるだろ……そういうので目立つのは俺のガラじゃァねぇ……」 「照れるんだ!? 頬を赤らめちゃうんだ!??」  受話器の向こう、ヘッ、と小さく笑う声が聞こえる。  ヘンリーの背筋にぞわっと寒気が登った。  こんなコルテス嫌である。  ていうか大事な事なので言っておきたい。  このコルテスは二次創……もとい、御前の為にしゃーなく働いているだけなのだ。決して綺麗なコルテスってわけじゃーないのだ。彼の言う「ジジィ」とは御前の事である。他のじいちゃんばあちゃんの場合の対応は推して知るべしなのだ。彼は間違い無く道に唾吐いて歩くタイプだ。噛んだ後のガムもそのまま吐き捨てるタイプだ。故に、色々と勘違いしないように。  そして斜めに話がズレはじめる。 「《災主》の描かれたポスターとか萌えキャラポスターつくった千葉県松戸市もびっくりだよ! ていうかチンピラが偶にいい事すると評価されるパターン? 凄くキモチワルイんだけど!」  背筋に走った寒気にヘンリーが述べる。  あまりの綺麗なコルテスっぷりに明日雪やら銛やらギガノーマルやらが降ってきてもおかしくないとかもしかしたらG県に侵食でもされた? とかそんなノリだ。 「……調子に乗ってんじゃねェぞ、××××すんぞオレオレ詐欺……」  低い、それは低い腹の底から出すような怒りに満ち満ちた声。恐らく一般人ならキモを潰した事だろう。  マジギレである。  ていうか発言だけならオレオレ詐欺に怒りを覚えているイイ人にしか見えない。それはそれで《災主》としてどうかと思うが。  しかし、だ。相手は同じく《災主》のヘンリー八世。 「……コルテス君はいいかげん僕の事思い出せない? 僕はおじいちゃんに仕方無く協力してるヘンリー八世だけど?」  告げて、しばらく沈黙が満ちた。 「……なんだ、テメェかよ。オレオレ詐欺かと思ったじゃねぇか。最初に名乗れよ」  漸くコルテスのテンションが元に戻った。とはいえ元々ちょっとチンピラテイストなのであまり大きくは変わらないが。  言われてヘンリーは漸くその事実に気付く。 「あれ? 名乗らなかったっけ?」 「名乗ってねぇよ。ボケてんのかよ股間ケース」 「誰が股間ケースだ。誰が」 「テメェの生前の絵を見るとどれも股間ケースしてるだろうが。事実だろ」 「僕はこないだ絵師さんにイケメンにしてもらったけどね! 生前とは色々違うのだよ!」  無駄にマントを翻し、偉そうなノリでヘンリーが述べる。何の話かわからない人はGDDD NOW TOPICS第6ターンを見てみよう! 「つっても俺には誘拐犯にしか見えなかったがな! 股間ケース男!」  コルテスはそう返す。何の話かわからない人はもう一度GDDD NOW TOPICS第6ターンを見てみよう!!  流石に股間ケース股間ケース言われてヘンリー、ちょっとぶち切れた。 「そういう君は、ポークビッツ……」 「ふざけんな××野郎、見てもいねぇのに何抜かす! ××すぞ!」 「安易に禁止用語に走るのは頭が悪い証拠だってばっちゃが言ってた」 「言い争いの基本だろ! じゃあアレか『《災主》たる我が中霊を一見する事無く嘲するとは許さじ。其はなべて貫かれ滅ぶべし』とか言えばいいのか? 馬ッッッッッ鹿じゃねーの!」 「馬鹿って言った方が馬鹿なんですー!」  あっという間に子供の喧嘩に。やっぱりあまり仲は宜しくなかったらしい。寧ろオレオレ詐欺だと思われてた時の方がコルテスの対応はマシだったかもしれない。  そんな愉快な《災主》達を見て、春菜も、御前も大変頭の痛い思いをしたらしい。  そして2人ともにしばらくは半分が優しさで出来ている頭痛薬のお世話になったとか。  なお、ヘンリーは春菜から、コルテスは御前からあまりの馬鹿トークっぷりに鉄拳制裁を喰らったらしいという噂もあるが真偽の程は不明である。  とにかく《災主》はどうであれ居るだけで周囲に迷惑やら胃痛やら頭痛やらをばらまく存在なのだ。 「ていうかさー……今君のアレコレ書いてる人、誰?」 「知らねーよ。だが何時もの俺となんか違うからジジィの中の人じゃねぇ気がするわ」 「僕もなんかちょっと違う気がするんだよねぇ」  ――まあ、本編と絡まないプラリアだからね。 ――――――――――――――――――――――――― ■マスターより  はじめましての方もそうでない方もこんにちは。高橋一希です。  ヘンリーはちょいちょい名乗り損ねる(?)癖があるのでもしかしたらこういう事もあるんじゃないか……と思って書いてみたのですが、コルテスさんが大変気持ちの悪い事になってしまいました……スミマセン。  それでは、またご縁がございましたらどこかでお会いいたしましょう。 ―――――――――――――――――――――――――  ここに書かれている内容・情報は、「GDDD外伝」内限定のものであり、公式設定と食い違う場合があります。ここに書かれた内容を元にしたアクションは、原則採用されません。  このリアクションの複製および、個人サイトやブログ等での無断転載・転用、無断配布等は固く禁止しております。 ※個人としてゲームを楽しむための交流ためであっても例外ではありません。 ―――――――――――――――――――――――――